第49話

そう言われたあたしは、すぐに言葉を返すことができなかった。


自分が予想していたらいおんさんの気持ちとは異なることを打ち明けられた。



それから彼は。



『―――――。』



音にしなくても伝わるように。




哀しい睛に、小さな気持ちと灯を灯して、あたしを見た。




あたしは、らいおんさんの言いたいことが分かった。



解ったからまた泪が零れそうになったのだ。













彼の屋敷では、生活している人が全員男性だということで、案内された大きそうなお風呂の入り口には、濃紺の暖簾にでかでかと『男湯!!』と書かれていた。


やっぱり、そういう人達の屋敷なのね……。



淡々と台所を案内されたときのように、広い屋敷の角をいくつか曲がって辿りついたそこを潜る。




入った、檜の良い香りのする脱衣所で、らいおんさんは何か、説明しづらそうに言っている。




『すわるところがある……あれ。』



『ぬぐところもある……それ。』




始めはただ突っ立って何も言わずに首を傾げて、どうすればいいか分からないといった様子だった。




『シャンプーとか、石鹸とかはありますか?』




訪ねてみると、らいおんさんはゆっくり頷いた。

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