第47話
『いただきます。』
『いただきます。』
向い合って、さっきの部屋に居座り同じ言葉を繰り返して、視線が交わって思わず笑顔になる。
あたしは大きなお皿に特大のハンバーグを乗せたらいおんさんのそれに、箸が付けられるのをじっと、期待に満ちて待った。
あたしの前には小さなハンバーグがふたつだった。
一緒にマッシュポテトも、にんじんグラッセも、ブロッコリーも乗せて。
らいおんさんは、好き嫌いが特にないと言っていた。
彼は綺麗な箸の持ち方で――彼がフォークを使ったことがないと言ったので、箸――ハンバーグを割る。
そっと持ち上げて、それもまた綺麗に口へと運んだ。
もぐ、と頬張る様子を窺う。
暫く待ってみたけど、らいおんさんは何も言ってこない。黙ったまま動かなかった。
『ら、らいおんさん?もしかして生焼けだったの?』
蒼くした顔で問う。
と。
顔を上げた、らいおんさん。
『………………こんなに美味しいものが、この世にあったのか。』
箸を持ったままの右手の甲で、口元を隠して。
泣きそうな震え声で、そう言ったのだ。
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