第46話

あたしには、そう返してくれただけで充分だった。



でも。


どうしてか、泪が零れそうだってことに気付いた。


らいおんさんじゃない。

あたしの泪だった。









空に風が巡って、道筋を立てる。



あたしたちはそれを仰ぐ。



仰ぎ見て、いつか、気が付くときがくる。



月があること。



月光に照らされて浮かび上がる風の路。



綺麗だと、口にせずに飲み込む。



そうやって代わりに泪を浮かべては、また。



結局巡り巡って風に乾かしてもらっているのだということに。




気が付く。









――…彼の手を引いて一緒に作ったハンバーグはやっぱり大きかったから、中まで火が通るのに時間が掛かった。


らいおんさんは火の加減もたどたどしくやっていたから、火が通る前に回りの端っこから焦げてしまうのではないかと心配になった。



でも何となく、彼が一生懸命作った大きなハンバーグを割ってしまうのは嫌だった。

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