第44話

そうしてあんまり嬉しそうに表情を綻ばせるから、意表をつかれてしまった。


らいおんさんが黙り込んだあたしに戸惑いつつ、『さおり、やっぱりだめか?』と窺うまで、息すらしていなかったように思える。




ああ、びっくりした。



急に、そんな表情を、魅せるから。





『らいおんさん。一緒に、作ってくれますか?』



『あ、』




えっ、と目を丸くした彼を不思議に見つめて返事を待つ。




らいおんさんの手は大きいから、きっと大きなハンバーグができる。


想像してみただけで、笑ってしまう。





『あ……。』



『?』




しかし彼は、綺麗な睛に影を落として、暗い床を見つめて何も言わなくなった。


どうしてなのかは、解らない。




『普段俺は、此処に入ってはいけないことになっている。』





『え、どうして――――自分の家なのに。』




らいおんさんは、一瞬の隙に見せた感情を両手で塞ぐようにして、睛を強いそれに戻した。





あたしにはそれが、酷く心の痛むことに映ってみえた。

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