第41話
この屋敷の中では、所々で普段幾人もの人達が暮らしている様子が窺えた。
広い台所。
ステンレスがぴかぴかに反射する流しには食器等、一枚も、湯呑さえ一つも見当たらなかったけれど、その向かいにある大きな食器棚には沢山のそれらが整頓されて積み重なっていた。
雫の跡さえ無さそうなそこを見て、らいおんさんはあたしが訪ねて来るまで、一度も此処を使用しなかったのかと。
ちょっと心配。
でも思い出せば、始めに足を踏み入れた玄関にはそんなに多くの靴があったようには思えない。
『あのー、問わせていただくほど、これといって胸を張るようなレシピは持ち合わせていないのですが、その。食べたいものとか、好物……とか、は。』
『ん?にくがすきだ。に『ひゃ……っ!』
『?』
台所の説明を受けたあと問うた質問に振り返ったらいおんさんは、その問いに目を輝かせた。
が。
それと同時に、目を擦る暇もないほどはっきりと、あたしの目に映りこんだものがあった。
耳、が。
気のせいかもしれないのに、よく声を上げられたものだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます