第40話

其の後、夕食の食材はどこにあるかというあたしの問いに対したらいおんさんは付いてくるよう言って、台所へ案内してくれた。




長い廊下を、大きな彼の後について渡る。



少し、西日が暑いなと思って足元を見れば、縁側の方から差し込む西日は廊下に影をつくっていた。




あたしの影。



前を歩くらいおんさんの足首に触れるように伸びている。





ただ。




彼の影には、予想しないものが在って。



どうしても、今は。




見ない振りをしなくてはならないような気がした。




だからか、不安になって、「らいおんさん。」と彼を呼ぶ。



そうすると彼は決まって振り返りもせずに、返事をするよう低く唸った。









台所は、あたしが今まで実際に目にしてきたどのものよりも広々としていた。



横に伸びるステンレスの大部分は大理石で造られている。



壁や低い位置には、あたしのレシピでは手の届かないような料理道具が並べられている。




普段どんな人が使っているのかと尋ねてみると、らいおんさんは、野菜を食べろと煩いじじいが使っている、と答えた。

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