第29話

「ひ、広いお家ですね、普段は他にも人が?」



ぽつりと聞いた言葉は、まだ聞くべきでなかったかもしれないし、今聞くべきことで合っていたかもしれない。

それを決めるのは、次のらいおんさんの出方次第。


けど言葉につまづいたあたしは、少なからず目の前にいるらいおんさんに気圧されている。





「ああ、そうだ。普段は騒がしい。……さおり、今日から一緒に住むのか?」




さらりと言ってのけ、不思議そうに小首をかしげるらいおんさんは、わからない。


あたしに気を許しているのか、許していないのかが、わからなかった。




「あ、やっぱり、住み込みなんですよね、そう、ですよね、……そう。」



「やっぱり、怖いのか?俺が。」




彼は、あの睛で、また。


射抜くように鋭くあたしをみつめている。なのに、どこか懇願しているような、そういう錯覚を憶えさせる。



これくらいはわかる。




目の前の綺麗な睛は、ただただ、


危うい。

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