第27話

目を丸くして言葉を失うあたしの前で彼はおどおどと、あたしを床に下ろして座らせた。


廊下から移動して、和室の畳、座布団の上。

前には立派な、木造テーブルもある。らいおんさんは向かいに胡坐を掻いて腰を下ろした。




おそらく、突然触れられることが駄目なのだ、彼は。




「わるい。わるかった。」



彼は目を見ず、濃い焦げ茶のテーブルに視線を落として、早口にそう零す。



……ううん、と首を横には振ってみたが、彼は顔を上げていないので伝わらなかったかもしれない。


仕方ないと思った。





「手。手は、しょうどくするから。」




そうして優しい言葉を掛けてくれる睛は、やっぱり思った以上に不安げに揺れる、から。


目の奥の、奥の方が不安そうだから。



段々可愛いと、そう思わせる。

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