第14話

ついつい身構えてしまっていたらしい両腕を、そっと下ろす。けど、正直まだ怖いので、目は逸らせない。逸らした瞬間に何かあったらどうしようと思って。


何かって何だろうね。




取り敢えず呼吸をしよう。呼吸を。



止めていた吸いかけの息を吸い込み直して更に落ち着きを取り戻すことに成功。


よしよし。




と、思ったら、身構えていた左腕に鈍い痛みがあった。




恐る恐る、ライオンの剥製から視線を外して、自分の左腕で視線を辿らせる。


手の甲の、親指付け根から中指辺りに掛けて身に覚えのない引っ掻き傷が出来ていて、血も僅かに滲んでいた。



玄関、開けたときかな?



緊張で気付かなかったとか。


いつの間に。




取り敢えず、ライオンがこっちを見ている和室の前で足を留めるのもなかなか精神力を消費するので、移動することにしよう。

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