第83話

「岬さんじゃない?亡霊?」




よく見ると膝や裾に泥のついたユニフォーム姿だった彼を、近くで直視できないくらい、指の隙間から見ていたいくらい格好良いい……と思い始めていた矢先の真顔。


何故真顔なの!?



「ち、違うぃます違、います」


「口回ってないけど」




ふ、と口元を緩める仕草。



あああ笑ってくれた、その仕草が好きです。




そして丁度帰りがけらしい彼にひとつ、疑問も浮かぶ。




どうして、会えたのだろう。




「今更来たの」



すこし、首を傾げて半笑い。その様子にはくはくとしたまま声が出ないのは今日飛び抜けて一番、予想していなかった現実が目の前に現れたからで。


瞬きもできない眸から溢れ出しそうなのは、彼を前にしたら空気も読まないこの気持ちだけ。

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