第82話
結局そう。
無我夢中で貴方を想って風を切った。
ライトの明かりだけを頼りにして目印にしてグラウンドのフェンス前に戻ってきた私は肩で呼吸。汗は滲んで冷たい風に乾く。
顔を上げた先の広い暗闇に、既にない人影を探した。
そこで初めて頬や鼻、腿、血の上った頭がじんじんと冬の痛みを感じていることに気が付く。
「……、……あ」
チョコレート、置いてきちゃった。
小さく広げた腕にはビニール袋しか掛かっていない。
ポケットを探るも、お財布しかない。
ない。
「……」
「岬さん?」
ヒュ、と隙間風みたいな音が喉から聞こえた。
息を呑み込もうと喉を動かすも切れるような乾いた痛さに呑み込みきった感覚はなく。
ただ、梶くん、と。乾いた喉で呼ぶ。
これは、夢ではない。
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