第77話

「わたす!」




私はブレザーの両腕にそっと抱えたそれを小さく抱き締めて、育美の方へ向く。




「育美、私がいつからこの日のことを考えてたと思ってる」




それを聞いた育美はふと表情を緩めて、そりゃそうだと呟いた。



「チョコも溶ける暑い暑い夏からだっけ?選び始めたの」




「うん。暑い暑い夏から」








『どうしよう』


『わー物凄い暑苦しい顔してどうした、わからない問題でもあったか。二次関数?』


『チョコ…ちょこれいとは好きだろうか…どのようなものが喜ばれるのだろうか……』


『数学はどうした?』




頭にない夏休みの宿題を広げた机を、唸りながら抱き締めた夏はもう記憶に古い。



懐かしかった。

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