第72話
「なにもないぜ」
「ハ?」
今度は、私の声だけが此処に消えた。レオはきつく口を噤んでいた。
なにもないだと?
何も無いわけないだろう。
「こ、このりゅーのウロコみたいな色したこいつ、おれのことしんじゃうくらいいたい捨て方するんだ、」
話に脈絡はないが確かに、ガキの身体には――始めに竜に齧られて失くしたという右耳のサンブンノイチや、レオに剣を向けられ切られた首の傷以外にも傷は多く在った。
「赤い、目も、いたいことされてあそこにいるの」
問う唇は、どうしてそこまでして問うのかとこちらが問いたくなるくらい、恐れを知っている唇だった。
レオが何をしたのかも私の目がどれほどの畏怖をこの小さな身体へ与えているのかも、わからないが問いだけはこの耳へ流れる。
「そのようなこと、あるわけ――「そうだ」
私が鼻で嘲った言葉は遮られ、私より低い声がガキへ吹き込まれる。
「主は、この方は、お前の言うその『いたいこと』をお前よりずっと多くされてあの場所へ閉じ込められているぞ」
「レオ」
睨んだことによって返された視線は、あまりに冷めたもの。
「おれ、助けることできるよ」
「……ハッ」
…ばかなことを言うな。
助ける?何から。
レオからか?
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