第71話

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かと思いきやレオに首ねっこを掴まれ四肢を垂れ下げていてもその眸であおあおと私を見上げ、それでも怯えたようなガキは、小さな口をおおきく開いた。




「あかのこと?おしえませんよぅーだ」



「「ハ?」」



思わずレオと共に声を上げてしまい、照れと気まずさの融合を味わう私とは裏腹に、レオは淡々と「口が利けたか」などと興味を示している。



お…。


私だけか…。恥ずかしい思いをしたぞ、レオ。




「オイ」


レオは、汚いものを摘む時のそのままでガキを見下した。



「お前、何故何度捨てても却って来る。何が目的だ」




……?



なんど、すてても?



レオは私が知っている以外にもこれと?




声にしないまま腹の中で思っていると、今度は私へ口が開かれた。



「貴方が深い眠りに就くころ、必ず〝コレ”はやってきて、外の世界から貴女の――月光が反射する瞼を見つ「待て。言い方を変えろ。なんかぞわっとする!なんかぞわっとする!!」


「ハァ。兎に角、コレは毎夜毎夜主を見に来ていた」


「私……?」


「はい、主を」




「何故だ。私に何がある」




短い手足でレオの長い胴体を殴ろうと蠢いていたガキへ向き直ってみると、ガキには私の背から零れ落ちる月の光が降り注いでいた。

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