第70話
冷静になった私は、黒い皮手袋をはめてそれの首根っこを持ち上げた。
「捨てろと言った筈だが」
「捨てた筈だが」
主と声が被るも、ギャハギャハと更に笑い声を上乗せするガキにクソ腹が立ちこめかみが反応する。
「『クソ』腹が立つ?それは何だレオ。何語だ」
「こざかしい!!」
「それは、私に対してか?」
「誓って違います」
「こ、ざ?こざ?コザッコザッコ!ギャハハ!!」
「マジ黙れ」
「…『まじ』黙「主、シー」
〝コザッコ”という、自ら造り出した言葉の何がそれほど面白いのか、延々と表情を崩している得体の知れないガキと、『クソ』『マジ』に眸を輝かせている我が主。
というか主は何故口にしていない私の思いを読み取ったのだろう。
「コザッコザッコ~~」
「ハァ。…もう一度、捨ててきます」
「……あ、あか。まっくろ」
ふと、またガキが何かいいだす。…主を指して。
「ガキ」
三日月の銀を背に負った主は、ふらふらと空を掴むようにご自分へ向かって手を伸ばしているガキを呼び止め、問うた。
「あか、とは何を」
「へへ」
ガキは、まぬけな笑い声を立てただけ。
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