第67話

ガタンッ、と重厚な扉の開く音で目が覚めた。




変わらない寝床の上で身体は既に起き上っていて、遠くで扉の音に続き何か云う声がしたけれど伝わっては来ない。


入れ替わりで浅黒く泡立つ視界の枠に姿が映った。それは近付いてきて近くで立ち止まる。




レオ。



「主」



呼ばれて視線も上げられない私は、未だ何も口にもできない。




「御(み)羽が、生えっぱなしになっていますね」




五十メートル四方の"箱"の中、私のモノは左翼が四メートルほど伸ばされ、右翼は窓際の寝床から伸びきることもできずに壁を伝い、窓布のところで骨と筋の限界まで折れ曲がっている。


そして、開く仕組みのないガラスへとへばりついていた。


…醜い。




だからか。




右翼がひやりと刺すのは。




「外では雨が降っています」




あめ。



ああ、あれか。



「主は外の世界の声ばかり聴くから、さぞかし今、主の御耳は煩いだろうと思ってここへ立ち入ったのですが、気が付かないくらいです」






ああ。



あれは、レオの扉の開く音ではなくて、外の世界がたてた声だったか。






二翼が、重い。

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