第53話

私は、私が帰るまでの話をしてくれたところで口を開いた。





「そ…う、なんですね、私、梶くんのことをマオウ様だと」



「…ああ」




私はこの背中の傷を、夢と関係のあるものだと思っていた。だからもし、梶くんがあの『マオウ様』なら、恐らくこの傷は彼が付けたものだろうと思った筈だ。




梶くんが、私の記憶の中の、魔王様……。




そして私が、勇者。





前世か、夢か、嘘偽か、真か。





信じられなくても、ふつうのひとだったら首を傾げるようなことが通じ合っている。



嘘じゃなく。






「でも、」






彼は、ふわりと私の耳元を撫でて笑んだ。









「それも思い込みなんだ、梨句」

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