第46話

「この時間でさえずっと在るものではないから、早く、答え合わせをしないといけないことがある」




「こたえ、あわせ…?」



「ああ。今、此処にいる梨句と、忘れる前の梨句を繋ぐものがあるはずだから」




私に腕を回して髪を撫でてくれる大きな手の平が心地良い。ずっとこのままで構わないと思ってしまうくらい心地良い。でも、時間は確実に時を刻んでいる。



それを彼も、困って、笑うように理解していた。





顔を上げた梶くんは、至近距離で、額を合わせて私にヒミツゴトを囁く。


いつだって目が、離せなくなる瞳をしていた。





「梨句。りくが生まれてからずっと、一緒に生きてきた秘密をもう一度だけ教えて」






「秘密…?」




彼の瞳しか見れない視界の中で揺らぐ質問。




ひみつ。



私の、秘密。




それは、ひとつならあった。ひとつしかなかった。あの、ひみつのことを云っているのだろうか。彼は、知ってくれているのだろうか。







「―――…私の背に在る、“ 傷 ”のことでしょうか……」

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