第39話

身体は現代に生きていた―ううん、生きている私。



心の中はあの秋までのものだけが鮮明さを保って色付いたままで、他の、彼の消えた記憶は色も消えたまま。



彼がいた筈の記憶は現代に生きていた方の私が『忘れた』ものだと云う。



そして彼は私が『忘れた』ことを『覚悟はしてた』と言った。







どうして、覚悟なんかしたのだろう。





それは、少なからず予想できていたということを示した。


彼と、もしかしたら記憶を失くす前の私はこうなることを知って…いた?





なら。記憶を失くすことを止めなかったのはどうして。




或いは。




……止められなかった……





「どうして、私の記憶は」















「――――それが、“代償”だった」

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