第38話

嬉しかった。



そう言った彼の口から次いで飛び出したのは耳を疑う言葉。







「覚悟は、してた」







……?





何?




彼は何を言っているの。






「俺がいる最後は?」




「……高校二年生の、秋です…。どういうことですか」




目の前で口を噤み、答えを待っていた彼はやさしい表情をしていたけれど、心臓は嫌な音で弾む。





「そっか。今、梨句の身体がその『高校二年生の秋』の時のものと違うことは判る?」






それを聞いた私は両手の平に視線を落として見つめ、髪が、伸びて長くなっていることも受け止めた上で頷く。




これで解ることは、私は“タイムスリップ”をしたのではないということ。

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