第26話
「…………梨、句?」
肩を、重たく冷たい身体を震わせ、崖から飛び降りる夢をみた後のように飛び起きた。
背中に、愛おしい声が繰り返されたばかり。
「…………え……」
唇の端から零れ落ちた自分の声は、世界の全てを不安がっているようで。
私と向かい合って眠り、薄く、美しい星屑の眸に私を映している彼を現実のものと思い切れず。
突発的に、呼吸の仕方を忘れた身体がガタガタと震え始めた。
「あ……?ハッ…………ハ……ッ」
「梨句、」
私に続いて身体を起こし、黒い胸元を掴んで浅い呼吸をし出す私を引き寄せる人。
ふわり、と、薫ったのは。
嗅ぎ憶えのある、花の香りだった。
『――――――……の、花だ』
「……嫌、いや、嫌、だ……っ」
耳を塞いで身体を折り曲げて、パニック状態に陥ってもなお心臓を突き刺すような痛みだけが開かない、閉ざされた記憶を抉じ開けようと、ドアを叩き続けている。
「梨句、落ち着け。大丈夫だから」
「こ……わ、い……嫌、嫌、い」
「梨句!!」
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