第27話

ヒュ、と気管から漏れる。





蝋燭に灯を灯していたそれが、蝋が溶けてしまうより早く、風でなく人の吹きかけた息によって消されるように。



虚しく。



でも、人は何も思わないだろうし、人は無意識下の中でそれを当然だと思っているだろう。



そんなことが、思い浮かんだ。





「は……っは…っ、あ、あ…」



「大丈夫。深呼吸」




何度も背中を擦る大きな手が、徐々に私の乾いた喉へ現実を与えていく。



自らの耳から離れた手が、代わりに誰かの心音を必要として。




それをわかってかわかっていなくてか、彼は私の背中を擦っていない方の手で私の手を握り、自分の心音へ触れさせた。





「……」




じ、と聴き入る先に滲んでいるのは、沢山の混乱から生まれている疑問の中の、たったひとつの光。






「りーく」



「…」



「驚いたな?…ここは、現実。……落ち着いてきた?」









「……、……。は、……い」









静かな周囲を制して響いた“現実”。


それが今一番私を安心させる言葉だったこと、どうして彼は解ったのだろう。

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