第27話
ヒュ、と気管から漏れる。
蝋燭に灯を灯していたそれが、蝋が溶けてしまうより早く、風でなく人の吹きかけた息によって消されるように。
虚しく。
でも、人は何も思わないだろうし、人は無意識下の中でそれを当然だと思っているだろう。
そんなことが、思い浮かんだ。
「は……っは…っ、あ、あ…」
「大丈夫。深呼吸」
何度も背中を擦る大きな手が、徐々に私の乾いた喉へ現実を与えていく。
自らの耳から離れた手が、代わりに誰かの心音を必要として。
それをわかってかわかっていなくてか、彼は私の背中を擦っていない方の手で私の手を握り、自分の心音へ触れさせた。
「……」
じ、と聴き入る先に滲んでいるのは、沢山の混乱から生まれている疑問の中の、たったひとつの光。
「りーく」
「…」
「驚いたな?…ここは、現実。……落ち着いてきた?」
「……、……。は、……い」
静かな周囲を制して響いた“現実”。
それが今一番私を安心させる言葉だったこと、どうして彼は解ったのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます