第18話
右足首の痛みを感じたのは、恐らく彼の場所と思われる一室に流れ込むように連れられてからだった。
けど、それより早く壁に背中を打ち付けるよう投げ出された私は、背中の鈍痛に眉を寄せそうになったものの、手首を押さえ付けてきた梶くんをみつめた。
みつめて、確めようとした。
彼が、梶くんなのか。
しかし先に困惑した表情を浮かべたのは、彼の方だった。
なに……?
「お、前は…………誰だ?」
え?
拘束する力が弱まって、するりと指が離れる。
自嘲するような嗤いの先、彼の指先は視線を惹きつけて自らの黒いランニングウエア、チャックに掛けられた。
肩を落ち腕を抜け、カサ、と床に脱ぎ捨てられる音。
彼は、何かを考えているようだった。
でも何も言わず、間もなく中に着ていたTシャツの裾に両腕が交差して掛けられる。
パサ、と先に堕ちて行った衣へ触れる音と、床に当たる音が微かに聞こえたと同時にまさかな、と囁く声がした。
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