第9話
『オムライスとハヤシライスが一緒になったもの』が来てから、私は少女マンガをパラパラ捲らせていただくことにした。
ちょっと、松方くんが食べている、湯気の立つ半熟卵が乗っかったそれも気になるけれども。見ない、見ないようにして。
五分後。
ぼんやりとした想いで顔を上げたら、水を飲んでいた松方くんが「それが気になったんですか、学園もの」と、問うて指した。
息を吸い込むように頷いて、開いたままのページに視線を落として。
うすく口を開く。
「『試しでいいから、つきあって』……」
「ああ、……そこが気になったんですか」
再び、頷く。
私は、梶くんがすきだ。
高一の春から、今、高二の秋まで。ずっと。もう一年と半年になる。
育美と梶くん、松方くんはアルバイト先が同じカフェレストランで、同い年ということもあり、どこか似ているところがあることもあり、育美と梶くんは仲が良く、松方くんは二人の後輩にあたる。
それで。
松方くんも、それを知っている。
『試しでいいからつきあって』。
それは、この後、『振り向かせてみせるから』の意味も込めての一言だったのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます