第9話

『オムライスとハヤシライスが一緒になったもの』が来てから、私は少女マンガをパラパラ捲らせていただくことにした。


ちょっと、松方くんが食べている、湯気の立つ半熟卵が乗っかったそれも気になるけれども。見ない、見ないようにして。





五分後。




ぼんやりとした想いで顔を上げたら、水を飲んでいた松方くんが「それが気になったんですか、学園もの」と、問うて指した。




息を吸い込むように頷いて、開いたままのページに視線を落として。


うすく口を開く。





「『試しでいいから、つきあって』……」





「ああ、……そこが気になったんですか」




再び、頷く。






私は、梶くんがすきだ。




高一の春から、今、高二の秋まで。ずっと。もう一年と半年になる。





育美と梶くん、松方くんはアルバイト先が同じカフェレストランで、同い年ということもあり、どこか似ているところがあることもあり、育美と梶くんは仲が良く、松方くんは二人の後輩にあたる。




それで。


松方くんも、それを知っている。





『試しでいいからつきあって』。




それは、この後、『振り向かせてみせるから』の意味も込めての一言だったのだろうか。

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