第十三話 二回目のファイトーン

 ええ…どうしよう………。

 この見た目から何もかも推理しないと行けないよ………。

 確か、見た目から邪楽が生まれた曲名を当てるんだよねっ!? 

 見た目は、外国人だけどそれが影響しない気がする。


「この人は、白いワンピースのうえに、華やかなビスチェみたいなものを着ているね」

「そうだな、これがきっと影響するんだろう………」

「そうでつね…」


 う――ん、日本人ではない気がする。

 でも私は社会が苦手だから、外国のことは何も知らないなぁ………。ここはナギとアルトとミューちゃんに任せるしかないかも。


「多分、南アメリカ大陸かアフリカ大陸の人だよね」

「アメリカとアフリカ? 似てる大陸多すぎる…」

「似てないし、習っただろ! 小学生で! 覚えてないのか!?」

「ま、まあ…だいじょーびでつよ………。ここかりゃ覚えて行くんでつっ」


 うう…優しすぎるミューちゃん。

 もうアルトに怒られても怖いことは無いよ。ありがとう…っ。

 確か最近、アメリカ大陸についてお話した気がするなぁ。私は頭の中を必死に探る。走っているみたいに思いだすのは疲れちゃう。でも、ファイト―ンになったからには頑張らないと!

 ええ…っと………そうそう姫香さんと喋ってたよね。

 好きな曲がどうのこうの、の時にブラジルは何大陸か、どうかって。今はそれを思い出しても意味が無いけど………っ。


「この服は、民族衣装だろう。多分な」

「う――んっ、ミューは知らないみんぞくいしょーでつ…」


 民族衣装、どこの国なんだろう?

 あれ、今は邪楽に関係している国を考えてるんだよね?


「ブラジル?」

「「えっ!?」」

「ブラジル出身なのか? この邪楽っ」


 アルトが私の目をジッと見る。

 その瞳が、私の心臓を激しく動かした。うう…怖いのかな………すっごいドキドキする。でも、本当に合っているかは分からない。


「確か、ブラジルって曲があったよ」


 私の答えに、アルトはフンとそっぽを向く。


「あっ! ここにブラジルの国旗があるよ~っ」


 ナギが邪楽の背中側に回り、そう私達に伝えてくれた。

 よしっ、これでほとんど正解だ! 

 私はアルトとミューちゃんと目を合わせて、急いで駆けよる。アルトは『musicdictionary』を目の前に差し出し、声をそろえた。


「「「ブラジル!」」」

――ヒュンッ


 出て来たトランペットをキャッチ。

 musicdictionaryの楽譜を見て、準備をする。ミューちゃんの指揮棒の合図に合わせて、トランペットに微かに息を入れた。


――♪♪♪《レドレ》♪♪♪《ミレド》

「いちゅっ! にぃーさん!」


 ミューちゃんの小さな声が私の耳に入る。指揮者がいるだけで、いつもと違う雰囲気がした。


―――♩♩♩♩♩♩♩《ドドララソソファ》


 曲が後半に入っていく。

 邪楽は怯える様子はなく、ただ私達の演奏を見ているだけ。

 それが、逆にプレッシャーになった。もしかしたら、また失敗するかもしれない……っ。


――♩♩♩《シシシ》

「終わりまちた」

 

 曲の演奏が終わり、私はトランペットを唇から離す。

 ドックン、ドックンと心臓が跳ね上がる音が体に響いてきた。今度こそ、邪楽を倒せると信じてる………!


――スーッ

「「「「消えた…っ」」」」

「おお~良く倒せたなぁ」

「でも、普通ノーマルだからよ! 格上シニアのわ・た・く・し達を倒せるかは別だわ~」


 格上シニアの邪楽がこちらを向いて、ニヤニヤする。

 うう…何か腹が立つ!

 絶対に倒してみせるからっ。

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