第十話 遊園地でパニック状態
バスで博物館を出て、数分後。
「ついた―――!」
私は天高く手を上げて、叫んだ。空はちょっと曇りだけど、気分は晴れ晴れ! 暑くなる季節だから、曇りがちょうどいいっ。
五月も暑いなんて…ヒエー!
今日は、学年校外学習で遊園地にやって来たんだ!
ちょっとだけ遊園地の裏側を見せてもらったので、今からは遊べる!
やっぱり遊ばないと遊園地に来た意味が無いよね。
班のメンバーは仲良しのさっちゃんに、私をかずねと呼ぶ
タピオカって良いあだ名だよね~。
たけおかの一文字を変えて、タピオカ。付けた人は結構センスある!
で、でも私のことをかずねと呼ぶのとはちょっと違うからっ。そこは勘違いしないで!
そう言えばアルトに
――「三人いないと邪楽は倒せない、常に注意しておけ」
と言われたんだった。気を引き締めないと!
一年三組の担任の先生に、人数報告をして遊園地の奥の方へ足を向けた。
すると通りすがりのナギに手を振られた。 周りには見たことが無い鳥がいる。バード様は、どこに行ってもバード様だなぁ。
「さぁ行きましょう」
タピオカさんが正した声で言う。
「ぜっ! たい! パレードを見たい! マーチング!」
「分かった、かずね。ハイハイ…お~、と近くにコーヒーカップだ!」
賢人がコーヒーカップ乗り場に駆け寄る。う――、またかずね呼びして!
遊園地に来るのは久しぶり。夢の国に来たんだから、怒りは封印。うん、うん…怒りたいけど。
乗りたくないと言う人は一人もいなかったので私はワクワクしながら列に並んだ。
――♩♬♬
明るい音楽がより心をはずませる。待っている人が少ないからきっと次に乗れる!
そう思った通りすぐに、コーヒーカップに案内された。楽しみ!
「それではティータイムスタートです!」
――♩♫
係員さんの声に合わせてコーヒーカップが動き出す。
うわーっと言いながらグルグル回す。 小学生に戻った気分だ! と言っても中学生になって三か月も経って無いけど。
――♩♬
心がリズムに合わせて揺れる。やっぱり音楽は楽しさを引きたてられるねと思った直後。
――♩……ジッ…
えっ…!? 音楽が鳴っていたのにノイズに変わった!? そのまま音が無くなって行く。音楽がだんだん消えてきた。
さっき見たときはこんなこと無かったのに……。
どうしてだろう? 機械の故障とか? 混乱したせいなのか、コーヒーカップのせいなのか…だんだん目が回ってきた……。
「ティータイムは終了です!また会いに来てね」
カチャリとコーヒーカップが動かなくなる。楽しかった……けど頭がクラクラしている。
私は皆と一緒に歩きだした。
〇┃⌒〇┃⌒
次に乗ったのはジェットコースター。とても速くて思わず叫んじゃった。
そして今並んでいるアトラクションは謎解きゲーム。『演奏家が残した謎』と言う名前なんだ。
「やるのこれで、二回目ー」
「ワシもやったことある~」
賢人がおじさん臭く言った。何で自分の事を”ワシ”って呼ぶんだろう? あ、でもすぐに賢人だって分かりやすくなる!作者も助かるね!
「お次のお客様ー」
「はいっ。お客様でーす!」
私の声にさっちゃんとタピオカさんが笑いだす。
何か変なこと言ったかな? まぁいっか。謎解きゲーム、楽しみだ――!
演奏家の謎と言うことは音楽に関係するから、私の実力を発揮する出番だからねっ。フフンッ。
入口のカーテンを係員さんに開けてもらい、謎解きゲームの世界に飛び込んだ!
「うわぁ~怖そう~」
「そうですね」
ほえ――、暗い。
その中に楽譜らしき紙と、演奏している合奏団の写真がある。
あれ? でも、何か消えてる? いや邪楽じゃないんだから、書いている途中でやめたんじゃないのかなぁ…。
――ドア―ッ!
「ぎ、ギャァ―――!」
「何々? あー、何か集まって来てる」
幽霊みたいな仮面をかぶった人が近づいて来る。
人込みみたい。…あれ? 人込み…パレード! 待って、楽しみにしてるパレードは!?
時計を急いで見る。 二時五十五分!? あと五分しかないよ!
「皆、パレードの時間!」
「いやだ―――、こえー!!」
「嘘でしょ! こんなに怖いのぉ――」
四人が脅えて、言うことを聞いてくれない。
どうしよう…このままじゃ見たかったマーチング!
「みんなぁ! マーチングとパレードォ! もう、リタイア口から出るよ!」
「えっ?」
謎解きゲームよりパレードの方が大事だから私は引きずってでも、出る!
私は力いっぱい皆を引っ張り、リタイア口をくぐった。
〇┃⌒〇┃⌒
私は全速力で走り出した。息が切れて、疲れが体の底から湧いてくる。でも、マーチングが見たい!
「わ…わお…ん……さ…」
「待っ………て」
その声が後ろから聞こえてくる気がするけど、気にしない! よし後ちょっと……………着いた―――!
疲れが足元の陰に溶けて行くような気がした。よし、ここからはパレードを思う存分、楽しもうっ!
「やぁ、こんにちは!」
遊園地内のキャラクターが歩いてくる。 誰? そんなキャラクターを!
私は期待で胸を弾ませ、パレードを見る。
「怖い、目開けすぎ」
タピオカさんに怒られた。そんなに怖かった?
瞬きを繰り返し、またマーチングが通る道に向き直る。
早く来ないかなぁ~。パレードに釘付けになり、一歩前に踏み出してしまった。
「すみませーん。この線からは出ないでくださいようにお願い致します」
「え…あ、ごめんなさい!」
さっと足をひっこめる。危ない、危ない、先生にばれたら怒られちゃう。セーフ、だよね?
「先輩!」
私を注意した係員さんの方に、新人さんっぽい係員さんが駆けよる。焦っているような様子だ。そして、小さな声でつぶやいた。
「マーチング用の楽器がありません!誰かに盗まれてしまったようですっ」
「何!?」
近くにいた私は係員さんの言葉に息を飲んだ。
確か……。邪楽の
邪楽の仕業かもしれない。アルトとナギに伝えないと!……でもどうやって伝える?
遊園地は広いから、探しただけでは見つからない。でも、今すぐに伝えないとマーチングが無くなっちゃうよ!
どうしようっ。額から汗がジワジワと出て来る。頭よ、働け…!
そう思った時、ブレスレットが緑色に光り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます