第五話 幽霊の謎

 私達は、音符を謎を解明するために、またまた『NISE music ファイル』を置いて、周りを見ていた。

 うん? 何か、男の子に睨まれた。そんなにうるさかったかな?


「どうしたの?」

「えっ? いや、怖い子がいるなぁ~と思って」


 私の答えに、ナギは笑った。へ、と口から言葉がこぼれたけど、それ以上にナギの声の方が大きかった。


「……うん?」


 ナギの言葉を聞いて、私は一人の少女に目が釘付けになった。一気に全身の毛が逆立つ。

 白髪少女……いや、白髪幽霊だ! しかも、私の方に、近づいてくる! 何で私達が狙われているの!? もうイヤだぁ~!


「ナギ、逃げるよ!」


 ナギが声をあげずに、一目散に走り出す。私も逃げなきゃ!

 前回校内で走って怒られたから、校庭に行こう! 昔のことを生かして行動するなんて私、エライ! 何て言ってる暇は無い!

 さっちゃん達にごめん、と言うことを忘れて、私は走り出した。


「こっち!」


 ナギの手をひいて、昇降口へ行く。上靴を履き替えて、ローファー!?  走りにくいけど、追いつかれるより、良い!

 急いで履き替えて、校庭へ行く。


「ぜぇ―――はぁ――」


 バタバタと後ろから追いかけて来る音がする。

 幽霊! だと思ったけれど追ってきたのは鳥。ば、バード様の力だぁ………。

 私はホッとため息をついた。




 〇┃⌒〇┃⌒




「では始めます。よろしくお願いします」


 吹奏楽部顧問、宇神うがみ先生が喋る。


「点呼しますね。櫻庭姫香さん」


 姫香さんの名前だ。でも、答えは帰ってこない。昨日呪いかけられていたから?


「櫻庭さんのクラスの人、学校に来ていましたか?」

「はい。……いました」


  部活に来てないってこと? でも……。あんなに音楽に熱心しんけんにだった……。 急な用事でもないと、来る!  姫香さんどうしたのかな?

 出席が取り終わり、軽く吹いてみようということになった。一年生は初心者が多いからほんのちょっとだけで、トランペット奏者の私にとっては簡単! でも、基礎は大事だよね。そのまま、吹奏楽部初日は終わった。姫香さんは最後まで来なかったんだ。



〇┃⌒〇┃⌒



 私とナギは家に帰るために校庭を歩いている。今日は部活はお休みだから、早めに帰って遊ぼうかな。


「ファイルのすり替え犯人、見つからないね……」

「うん……」


 おばあちゃんの曲、早く見つけないと!

 と思っていると、肩に手を置かれた。


「っ………………! 姫香さん、こんにちは~びっくりした~!」

「こんにちは。久しぶり、と言うほどではないけど、久しぶり」

「久しぶりです! あの、昨日何で部活に来なかったんですか?」

「え? それはもちろん……音楽なんてこの世に必要ないからよ」


 姫香さんが強く言う。氷のようにとがったものが、私の頭に鋭く刺さった気がした。

 な、何? いきなりそんなこと言うの? 姫香さん、そんな人だっけ?


「姫香さん……?音楽は楽しいですよ?」

「私の前で音楽の話なんて、しないでちょうだい」


 え? 今の言葉、何? 怒ってたよね……!? 何であんなに怒ってたの?


「あなた達も、吹奏楽部なんて行かない方が良い。いや、行かないで」

「「えっ」」


 私達の口から言葉が出ない。

 姫香さんはフンとそっぽを向いて、どこかへ行ってしまった。


「なぎ、音楽好きなのに……。あんな言葉言われたら、傷つく……というか、姫香さんはそんなこと言う人じゃなかったよね?」

「うん…」


 ヒュ――と風が吹く。とたんに体からどんどん力が抜けた。風が私の気持ちをさらって行ったみたいだ。

 姫香さん、あんな言葉を言う性格ひとじゃない。何かがおかしい。

 前、幽霊白髪少女が姫香さんの額に手を当てていた。もしかして、呪いをかけていたの!? まさか、そんなことあるはずない。うん、だって現実だもん。うん。


――ツカツカツカツカツカッ


 後ろからも姫香さんと同じような足音。不思議に思って振り返ると…白いブラウスに鬼のパンツ姿の幽霊白髪少女だった。

 タイミングが良いのか悪いのか。どんどん私達に近づいて来る。もうっ、何で!? いい加減にしてよぉ!


 「ギャ―――ッ」


 ナギの悲鳴が校庭を包んだ。美少女の雄叫びって、強烈! 耳の当たりがキンキンする。

 ナギも『呪われた』と思ったのかな。さすが小学生からの付き合いの私達、考えることが一緒!

 ナギの手を引き、人生で一番速く走る。呪われるかもと思うと、足が急加速! この日が百メートル走のタイム計測だったら、世界で一番速くなれたのに! ギネス世界記録に載れたのに!

 あんまりなじんていない校庭をひたすら走る。

 すると、私の手についているブレスレットが光輝きだした。おばあちゃんからのプレゼント。まるで宝石ほしのように輝く。

 すると、後ろのナギの手のあたりも光り出した。

 手には、私がつけているブレスレットと色違いである水色のブレスレットが付いていた。

 少し色が薄れているのが私のブレスレットとよく似ている。

 ぴかぴかと輝きが増していく。きれい……。私とナギが同じブレスレットをつけている。どうしてだろう。


 「ヴォ――――!」


 幽霊白髪少女が何やら叫ぶ。……まずい! そこは行き止まりだった。

 後ろにはもう幽霊白髪少女がいる。どうしよう!? このままだったら呪われる! 姫香さんみたいになっちゃうの!?

 誰か助けて、と叫びたい。でも、衝撃のあまり口が動かない。

 私達は絶対絶命のピンチに追い込まれた。

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