第8話 タカラダ文書 最終項

 継続──それは力。


 ジャッカルプラモデル部の活動期間が仮に永遠に等しい時間と仮定するならば、理論上、全てのメンバーの全てのやりたいことが実現可能だ。


 どうしてそうなるかって?


 例えばこの宇宙の時間に始まりも終わりもなくその無限遠むげんえん彼方かなたに限りがないとする。今我々が生きている銀河が終わったとしてもいずれ果てしない時間の果てにまた似た宇宙が生まれるだろう。宇宙が無限なら、我々のこの銀河も既に何百億、何千億、何兆個目の銀河かもしれない。そのよく似た過去と未来の銀河の地球に似た星では、俺に似た誰かがスマホでプラモデル部のドキュメンタリーを書いているのだろう。無限回それが繰り返されるなら、ありうる全ての地球でありうる全てのオレがありうる全ての模型戦士マサハルを書いている──。


 ……なんの話だっけ。


 そう! 継続!

 活動さえ充分な期間継続されるならば、それに比例してできることの選択肢は増え、実績の積み重ねは厚みを増し、そうなれば泡沫うたかたの夢として語られた様々なメディアやジャンル、有名人やメーカーとコラボレーションを含め、今できない色々なことにも手が届く明日が見えてくる!


 さっきオレは、活動の継続にはモチベーションの維持が大切だと述べた。


 具体的には「褒め」だ!!!

 特にジャンル初心者!

 彼または彼女らには大袈裟おおげさかと思うほどの褒めが不可欠!!!


 旗印はたじるしとチーム名のプロパガンダで原始的な帰属の高揚こうよう鼓舞こぶし、内外に活動を示すことで実績という裏付けを積み立て、「褒め」という報酬ほうしゅうをお互いに与え合って承認欲求しょうにんよっきゅう自己肯定感じここうていかん頬袋ほおぶくろ飴玉あめだまをぎゅうぎゅうに詰め込む──我々自身で我々を洗脳し、モチベーション自己生産の円環えんかんとなす。

 その円環えんかんは、上手く行けば自分で自分の回転を加速させ、永遠を目指して回り出す。


 そして永遠の時間の中には、無限の可能性が内包される。


 逆に忌避すべきはダメ出しと求められてないアドバイスだ!

 特に求められてないのに教えてあげようおじさんは超法規的に◼️の◼️を◼️めてでも即時プラモデル部から◼️◼️しなければならない。


 これは──オレ自身の苦い経験から得た教訓でもある。経験は最良の教師だ。その授業料はとても高く、強い痛みを伴うが……。


 とにかく!


③褒めの推奨すいしょう、求められてないアドバイスの禁止


 これがオレがジャッカルプラモデル部でやりたいことを実現するための、最後の1ピースだ。


 つまり──


①部隊章とチーム名が欲しい


②月イチくらいで作品合わせをしたい


③褒めの推奨すいしょう、求められてないアドバイスの禁止


 完成! 刮目かつもくせよ!


 何一つ欠くべからざるこれが!オレの!


 タカラダ文書だっっっ!!!!

 

 


 午前1時過ぎだが今からセブンイレブンに行ってこの文書をPDF化して専用アプリでスマホに取り込み明日それをメールで自店舗に送って自分のフォルダに移しコピーして本社ドライブプラモデル部フォルダのやりたいことエクセルに別紙参照と記入してキックオフミーティングの告知メール返信にこのPDFをペースト添付てんぷして少佐(副部長)に送るぜ!!!

(※宝田家にはPC環境がないため)




*** つづく ***

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