第7話 タカラダ文書 第二項

 オレには一つ気になっていることがあった。


 プラモデル部キックオフミーティングには、家族在宅の中こっそりエロ動画を観ている時以上の注意力と集中力とで参加していたが、「我々が主体的にプラモデルを作る話」が一度も出て来なかったのだ!


 これはマズい。非常にマズい。

 なぜならプラモデル界隈かいわいは「口だけで作らないやからに冷淡」だからだ!

 いや、プラモデル界隈だけじゃない、イラスト界隈も、マンガ描き界隈も、小説も写真も釣りも音楽も──エラソーに語りはするが実際にやってない人間に対して総じて冷淡なのだ!(そりゃそうだという話ではある)

 我々にプラモを作っている実績がなければ、メーカーコラボもYouTuberやVtuberコラボも模型教室も……説得力ゼロだぞ!

 我々は一定の量、できれば定期的に「プラモ作ってますよ」を内外に示し続けなければならない!

 ラーメンを作らないラーメン屋がいるか?

 変身しない仮面ライダーがいるか?

 例え食レポしない彦麻呂がいるか?


 プラモを作らないプラモデル部とはそういうことなのだ。


 代謝たいしゃをやめた卵は死んだ卵だ。

 第三者からの「だってお前らプラモ作ってねーじゃん」はプラモデル部にとっては死亡診断書なのだ。

 とはいえ我々は有志の趣味の集い。

 模型制作の強制や頻繁ひんぱんすぎる締め切りといった過度な負担増は御法度ごはっと


 ここは月一でテーマ決めて作品合わせ、参加は自由、クオリティは問わない──くらいで。素組みパチ組みだって構わない。作っている実績、その積み立てがそのまま我々の活動への信頼と説得力の貯蓄になる。

 17人いるわけだから、その1/3が作品を上げたとしても5、6個は上がる。3ヶ月に1個なら超超ライトユーザーでも負担ではなかろう。年4個だぞ。

 例えば公式X(旧Twitter)とかインスタとかにジャッカルプラモデル部・今月のテーマ『愛機』とか『好敵手ライバル』とかで毎月5、6個の写真が上がる──これは最低ラインだと思うが、同時に必要充分でもあるように思う。よその人は我々が何人かなんて大して気にしないだろうし、社内の我々に冷ややかな勢力は誰が何個作って写真が何枚上がっているかなんて精査しないだろう。


 と、同時に、後々我々の活動が上手くサイクルが回り、なんかいい調子らしいと話題になり初めた時に現れるであろう「プラモなんて興味ないどころかなんなら馬鹿にしているが、話が美味しそうだから名前だけ入れていっちょ噛みして自分のキャリアの一部に利用したい奴」への牽制けんせいにもなる。大佐と少佐が……いや、部長と副部長がそれを感じ取った時には「我々は月一で作品合わせして対外的に発表してますけどそれくらいで作ってますか?」と言ってやれば良いのだ。(嘘ではない)(証拠もある)(そしてその証拠は月一以上では作る気概のある本物の模型バカの作品写真の束になるはずだ)


 考え過ぎじゃないかって?

 これを考え過ぎと思える環境で、オレも人生を送りたかったぜ。


 プラモデル部はプラモを語るだけのスピーカーの集まりじゃダメだ。手を動かし、ゲート跡を削り、色を塗りデカールを貼る、「作る者たち」の集まりであるべきだ。


 「でもお前ら作ってねーじゃん」とは言わせない!

 作ってないスクラッチビルドより作った素組み!!


②月イチくらいのペースでテーマを決めて作品合わせをしたい


 これがオレのやりたいことの二つ目──というよりこれこそプラモデル部をプラモデル部たらしめるプラモデル部のアイデンティティの根幹だぜ!!!

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