第3話 オリジナル17

「宝田さん、選考通ってましたよ」


 先輩社員の荒木原さんの声が、天使のラッパみたいに聞こえたのは初めてだ。


「やったァァァァ!!! ありがとうございますッ! ありがとうございますッ!」

「私は何もしてません」

「……それは確かに」


 なるほどな……どうやらオレのHGブグが只事ただごとじゃねーって見分けはつくくらいには、あちらさんも素人じゃないってことか。こりゃめて掛かると綺麗に足元掬あしもとすくわれて手痛い目にあうかも知れねーな。もっとも、模型に関しちゃ何かをめて掛かるなんて気は更々さらさらねーが。


 合格通知のメールには選抜メンバーの名簿とTeamsによるweb会議……プラモデル部キックオフミーティングの日程が記載されていた。


 よし。その日は休日だ。本業に支障なく参加できるぜ。

 メンバーは、ひい、ふう、みい……17人か。

 ジャッカルグループ全体から選び抜かれた17人。まさかオレがその内の一人になれるなんてな。こんなコロコロのホビーアニメみたいな展開がこの歳で訪れるとは、人生ってのは驚きに満ちてるぜ。


 宜しくな! まだ見ぬ戦友たち。

 みんなのことは敬愛を込めて開祖の17人──「オリジナル17《セブンティーン》」と呼ばせてもらうぜ!


 web会議の概要は──部長挨拶、メンバー紹介、プラモデル部発足のあらましと現状、今後の活動方針について……か。


 オレは自分のiPhoneのカレンダーにキックオフミーティングの日時を入力し、一時間前と一日前とに告知アラームを設置した。


 用件のタイトルは「K-day」。

 

 いよいよ始まるぜ。

 家電量販店ジャッカルにとって未来永劫記念すべき日が。


 そして模型界隈に語り継がれるだろう、新たなる伝説のその1ページ目がなっっっ!!!

 


*** つづく ***

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る