第14話 傲慢なる死肉漁り
ランチスの遺跡へ辿り着く。そして…かつて存在 した文明の記録に埋もれていた日記の著者の名に、煉以外は驚きを隠せなかった。
「そ、その名前は…?」
「まさか…イースト教開祖のメシヤ・イストに関連している存在か…?…レンはこの文字の何を
知っている?」
「私の故郷の文字でね、まだ人間だった時の故郷で使われてた物だ…まさか同じ所の出身がいたとは
ねぇ…ん?どったの?」
皆の思考が停止し、処理を終えると同時に驚きの
表情が溢れ出す…
「え?え!?人間ってドラゴンになれるのか!?
ていうか…!別世界から!?」
「いや…普通に死んで生まれ変わっただけだよ…」
「なぁんで死ぬ前の記憶を持ってる!?死んでから生まれ変わったなんて証言した奴は歴史上で一人もいないんだよ!一体どうやってそんな事を…」
「あんまり前世の事は覚えてないけどさ…昔も
腹ペコだった事はしっかり覚えてるよ…」
「前世から暴食を背負っているのか!?というか…死んだ事を…覚えているのか!?」
「うん…餓死したよ、成長するに従って空腹も…
食べる量も大きくなってるのにどんどん痩せて
いくんだよ。それこそ骨と皮しか無いくらいにね…
医者も頭抱えてたよ…鑑定みたいにスキルは無い…
スキルは見れないし、あるかすら分からない…
魔術は存在してないし…」
「………」
皆が複雑な顔をする…
「まあ…もしその日記が本物なら…手がかりが
あるかもしれないわ。私達はここを探すから、
解読は頼んだわ。」
図体のでかい煉は部屋の書類を傷つけない様に入口近くで解読を始める…
[異世界に転生して一日目 随分と治安が悪い所にきてしまった。追い剥ぎに襲われて傷だらけだけど親切な人が助けてくれた。自分の体が食パンに
なってて子供に美味いと齧られた。あと襲われた時の傷からワインが出てきてびっくり。体のパンにはワインは染みてないみたいだ。一体何の生き物に
生まれ変わったのやら]
「これは…生きた食パンの日記だ!」
「一体何を言ってるニャ…」
「いやまて…確か…メシヤ・イストには体を
ちぎってパンにして与えたという逸話がある……
血からワインを創り出して人々を祝福した逸話が
ある…」
「ということは…この日記の持ち主は本当に…
メシヤ・イストなのか!?」
「前世のどっかで聞いた事あるよ?それ…
まあいいよ…続きは…」
[二日目 ちぎれた部分が治った。僕を齧った子が
また来た。体はちぎっても痛くはないしすぐに治るみたいなのでまたあげた。すごくうれしそうだった。]
日記にはこの様な他愛もない日常ばかりだ。
肝心の大罪治療への情報は無い…空腹にイラつき
ながらも…ピンセットの様な繊細な手の動きで
ページをめくると…ある文章に目が移る…
「…どうやら、体を食わせる事で他人の傷や病気を治す力を持っていたらしい。」
大罪による厄災の予言についても記載がある。
[災害を起こす者達は望んで災いになるわけでは無く、魂自体が病巣になって歪んでしまっている。
ずっとお腹が減っていたり、全てが億劫になったりするみたい。僕の力でも治せないなかった。
どんな症状も治せたのに。
追記 僕の力のせいでランチスに他国の兵が攻めてきた。みんなと仲良く出来ないのかな。]
これ以降のページには空白だけが残っていた。
「……大罪を魂の病気って定義しているみたいだ…
この頃は大罪とは呼ばれていないのか…」
「これは…持って帰るべき物だニャ…」
「…んん?これは…」
セドナが埋もれていたファイルを発掘する。
「病魂を持つ者について?」
読んでいるセドナによると、見つけたファイルは
大罪の持ち主自体を研究する物だった。種族…
性別…年齢…全ての項目から共通点を絞る事を
目的としているようだ…
「この資料によると…大罪を持つ者は、全員が
莫大な力を持つ異形の魂を宿し…スキルの発動
により肉体や精神に底のない渇望が湧いてきて、
成長途中の若物は特にその症状が強いらしいわ。
…それにしても…魂の形を観測するなんて…」
「そういやぁ…死んだ時にそんな事言われたな…」
「だ、誰に?」
「死神のオッサンに言われたんだけどね、強い魂に耐える為の体に成長する為に馬鹿みたいな
エネルギーがいるとかなんとか…」
「……なんでそれをもっと速く言わなかった!?」
「え?関係無さそうだったし…皆は大罪持ちなのにエネルギーが足りてそうだから…私だけの問題だと思ってたんだよ…」
「…妾も大罪を解放した後は随分とを消耗して…
体の節々が痛んで力が入らなくなってしまった…」
「私だけでは無く…セドナと煉も同じだったの?」
「つまり…魂が大罪の発生する大元だ…しかし、
触れる事も出来ぬ物をどうしろというのだ…」
────────────────
一方、地上ではメーヴルとティエルスフの戦闘が
行われていた…降り注ぐ魔術の雨が空をも覆って
しまう。
「いつもいつもアタシの邪魔ばっかして!昔の頃のアンタはもっと誇り高き龍の頂点だっただろう!
何故そんな小物になった!?」
しかし、龍が答える事はない…ただ獣の様に叫び、
己以外の存在へ殺意と悪意だけを向ける。
「いい加減…目ェ覚ませよォ!!」
拳に魔力を込めて殴りかかる…魔術の込められた
拳の乱打にティエルスフが怯む…しかし、傷は一切入っていない。単なる防御反応だった…
「随分とビビリになったな…!外道に堕ちる前の
アンタなら臆せずに受け止めに来ただろうが…
今や姑息でビビリなトカゲさ!かつての
アンタに憧れた分…本当に腹が立つ!なんでそんな風に腐り堕ちた!?」
龍が動きを止め…ゆっくりと目を合わせる…
「…冥土の土産に教えてやろう…矮小な人間よ…
この龍にはもう言葉など届かん…既に死んでいるのだからな…ククク…」
「なっ!?」
突如言葉を発した龍は話を続ける…
「我は傲慢の王…キニアスフ…この龍は我の糧と
なる名誉を受けた…!」
「な…なんだと…!?」
「おかしいとは思わないのか?力しか持たぬ者が
後から大罪を宿し…突如変貌するなど…」
「全部…全部テメェの仕業だった訳だ…!!」
「ククク…安心しろ、メーヴル・シルフ…貴様も
我を宿す栄誉を持って死に向かうのだからな!」
「…もう…奴とは闘えないのか…!」
「この龍は我が一部となった…ティエルスフという存在は我の礎となりこの世から消え去った!」
続
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