第12話 罪を喰らわば罰まで
「さて…そろそろルフティに着くよ!」
「着いてきた身で言うのもなんですが…文書を
送ったとはいえ…突然来たらペテン師扱いしか
されないと思いますが…」
「なぁに、その為にコレットを連れてきたんだろ?
私のスキルツリーを鑑定させれば済む話でもあるが
どうせなら王族を連れてった方がいいだろ?」
「まぁ…私はそういうのに嫌気がして出てきた
から、喧嘩したままで仲直りはまだですし…
あまり歓迎されないと思いますけどね…」
辿り着いたルフティの門番は大層驚いた顔だった…
無理も無い…自国の王族と他国の女王が大罪と共に帰って来たのだから。
───────
「久しいわね…コレット…ほんの少し前まで
ニヴローとパリングに抱っこされていた子が…」
「千年は前の話でしょうお婆様…」
「ふん、芽生えたばかりの新芽である事には
変わりはないだろう…カカア…まあよい。
よく帰ったな…コレット…しかし、大罪の持ち主を
連れてくるとはな…災厄たる者達に絆されたか?」
「あ?」
[メーヴル…!ちょっと黙ってて!]
「お爺様…私は…産まれた時から持つ力だけが罪に値するとは思いませんから…罪である事に苦悩し…
抑える姿を間近で見て、彼女達もまた大罪の被害者であると感じたのです…罪を憎んで人を憎まず…
あなたからの教えは忘れていません。」
「…どうします?テオブロマ…愛しい孫がちゃんと成長して帰ってきましたよ?……テオブロマ?」
玉座の王は俯いたままだ…
「ぅ……うぅ…」
「え…?」
「う"お"ぉ"ぉ"ぉ"…!何ていい子に育って…!
う"お"ぉ"ぉ"あ"…!」
「え?え?」
ルフティ国の王が兵の目も気にせず溢れた親ばか
が爆発して感涙する…一瞬だけ、兵達は呆れと安堵が混じった顔をする。
「おじいちゃんったら…」
「テオブロマ…来賓の前では我慢しなさいと
あれほど言った筈ですよ?」
「だ、だがぁ…」
「少し静かにしていなさい…!」
「は、はいぃ…」
「こほん…非礼を詫びます…メーヴル女王…
彼は…コレットの為に悪役を最後まで演じるつもりだったのでしょうが…あの子煩悩には無理だった
様です…何せ家出してしまったお転婆娘が、
古き教えを忘れずに守り続けていたのです。
正直…私も目頭が熱くなる気持ちでした。」
「あ"あ"あ"ぁ"…!孫がこんな立派になって…!
ニヴローは許せんけど…!こんなに素晴らしい子を育ててくれてあ"り"か"と"う"!」
「…まあ彼を見て涙も引きましたが…」
何も知らない者達は威厳をかなぐり捨てた王の醜態に思考が停止していた…
──────
「それでは…要件を聞こう。」
そこには先程のやかましい子煩悩は居らず…
王としての威厳に溢れる男がいる…
「今回、海底にあるランチス探索を行うに当たって
ここを拠点としたい…」
「ほう…して、ランチス探索に拘るその理由は?」
「大罪の力に身を任せて墜ちていった…
ティエルスフ討伐の鍵になる技術だ…大罪を消せばスキルに頼った奴の弱体化が進むだろうし…
何より、キーケ達を治せるか知りたいのさ…」
「ほう…」
「奴がランチスを沈める少し前には、大罪を剥がす
研究が進んでいたって噂があるほどさ…アタシ達の目標はその研究の成果を得ること…ウチの奴らには必要な物と思ってね…」
「うむ…ならば…我らも協力は惜しまない…」
その時、どしんと地面が揺れる…
「あぁ?全く…何なんだ…!」
「長老!龍です!朱い龍が門の前に!」
「何!?」
「あいつ…一体何やってんだい…!?」
─────────────
「な、何なんだコイツは!?」
「…オイ、メーヴルがここに来た筈だが…」
「貴様…まさか…!讃祀のティエルスフか!?」
「…いや…違うけど…」
「え?」
「コラーッ!!何やってんだい!!」
「あらま…元気そうだ…」
「アンタ、勝手に消えたと思ったら今度いきなり
現れて…何がしたいのさ…!」
「まぁ…飢えは多少凌いだし…ちょいと噂話を
聞いたもんでね…」
「…レンめ…妾に一言も告げずに去りよって…
妾はそういう事されんのは一番嫌いだよ…!」
「そんなに怒らんでくれ…なんでも…ここは大罪の概念を作った宗教が盛んな国って聞いてな…」
「もしかして心配してきたの?」
「気分とはいえ…飯を我慢してやったんだ…
元気かどうかも知らないし…折角だから、
見に来ようと思ってね…」
言い終えるとメーヴルの拳骨が頭に落ちる…が…
「硬ァ!?」
「何やってんの…」
「オメーだよ!人騒がせなトカゲだな!全く…!」
─────────
「…この体も駄目な様じゃな…」
緑に包まれたナマケモノはグズグズと腐りゆく…
そして死体近くの同族に彼が移る…
(メーヴルめ…ランチスに向かうとは…あれに
辿り着かれては…我が記録の全てが…む…?)
サルミアは煉とメーヴルやり取りを覗いていた…
(役立たずめ…獣と変わらぬ下賤な俗物が一丁前に
疑いを抱くなど…あれ程の歪んだ精神には儂の力も効かぬか…)
「……まぁ…突然国に攻め入りはせんわな…あれと
お主の様な知性無き愚者を比べるべきでは無いか…のう…ティエルスフよ。…無視か…まあよい。」
「………」
「刹那の時を孤高に座するお主には理解できんか…
命尽きる終焉の時が…!我が生を…我が罪を消えぬ爪痕とする為に…ランチスは永遠に人々の未知
でなければならんのだ……その為にも…奴ら全てを根絶やしにしなければな!さぁ…ティエルスフよ…お主の好敵手と殺し合う機会をやろう…その死を
名誉で彩る最期の機会だ…!」
続
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