第2話 昼下がりの訪問者

占いの館の玄関の扉には、いつの時代のものか分からないが、美しいステンドグラスがはめ込まれている。微かな光がガラスを通して差し込み、色とりどりの模様が床に映り込み、その光に照らされると、訪問者のシルエットが浮かび上がる。静かな空間にその姿が映し出され、まるで異世界への入り口のような雰囲気が漂う。


「いらっしゃいませ。占いの館、星辰と月夜の部屋にようこそ。」

スピカが鑑定室から出てきて、穏やかな声で訪問者を迎える。


「どうぞ、中へお入りください。」とスピカは優しく促す。訪問者はその声に従い、彼女は緊張した面持ちで、周囲を見渡しながらゆっくりと館内へと足を踏み入れる。


紅葉の舞う11月の冷たい風が、遠くから微かに感じられる。館内にはステンドグラスを通した柔らかな光が差し込み、まるで館の時間が止まっているかのような印象を与える。


「今日はどなたにご依頼されますか?」と尋ねると、訪問者は迷いながらも他の二人の占い師に視線を移す。


天樹は背筋を伸ばし、礼儀正しく一礼しながら「天樹と申します。方位や運勢、自分自身のことについてお悩みでしたら、ぜひお力になりたいと思います。」と、落ち着いた声で語りかけた。その声には、長年の経験に裏打ちされた信頼感が漂っている。


訪問者は天樹の言葉に一瞬耳を傾け、彼の静かで落ち着いた態度に安心感を感じ取るものの、その生真面目な雰囲気に少し気後れしたように目をそらした。


その時、自分の鑑定室の前から柔らかな笑顔で訪問者に話しかけた。「セドナだよ。今日はカードが特別なメッセージを持っているかもしれない。占いは気軽に楽しむものだから、リラックスしていただけると嬉しいな。」彼は一歩前に出て、軽く手を広げて明るく迎える。そのカジュアルな態度に、訪問者の顔にほんの少しの安堵が表れた。


「占いの結果がどう出ても、あなた自身が一番大事なんだからね」と続けるセドナ。そのフレンドリーな態度と親しみやすい言葉は、訪問者に少し安心感を与えたようで、彼女は小さく頷いた。


天樹はそんなセドナを見ながらも、柔らかく微笑んで「占いは一つの道しるべです。どの道を選んでも、あなた自身が納得できる形に導けるようにお手伝いします。」と補足するように優しく語った。


訪問者は二人の言葉に耳を傾けながらも、再び最初に声をかけてくれたスピカに視線を戻した。スピカの持つ穏やかで優しい雰囲気が、彼女の不安を少しずつ解きほぐしていた。訪問者は自分の心が自然とスピカに引かれていることに気づき、「最初に声をかけてくれた方にお願いしたいです」と、少し迷いながらもそう伝えた。


スピカは微笑みながら頷き、「ありがとうございます。申し遅れましたが、私はスピカと申します。星の動きや配置からあなたの運命を読み解きます」と簡単に自己紹介をし、「では、私の鑑定室へご案内しますね」と言い、二人の占い師をちらりと見やる。


天樹はその様子を見て静かに頷き、「どうぞごゆっくり。」と一礼し、その落ち着いた態度には、他の占い師たちとの連携を重んじる姿勢が表れていた。


セドナは笑顔で、「スピカに任せれば安心だよ。僕はいつでもここにいるから、また何かあったら声をかけてね」と軽い調子で言い、そのフレンドリーな態度に訪問者は思わず微笑み、少し緊張がほぐれたようだった。


スピカは訪問者の歩調に合わせてゆっくりと鑑定室へ向かいながら、「少しでもリラックスしていただければ嬉しいです」と優しく声をかけた。訪問者はその言葉に微笑み返し、心が徐々に落ち着いていくのを感じていた。


鑑定室の扉が開かれ、訪問者を中へと導く。扉が静かに閉じられるとともに、館の静寂が再び戻った。

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