第3話 私は...峰木桜子です
スピカの鑑定室は、暖かな光が差し込み、ハーブの香りがほのかに漂う、落ち着いた空間だった。訪問者はスーツ姿で、真面目で控えめな雰囲気が漂っていた。
彼女はスピカから差し出されたハーブティーを両手で包み込み、その温もりを感じながら深呼吸をして、気持ちを落ち着かせていた。
スピカの優しい眼差しは彼女を見つめ、自分から話し始めるのを静かに待っていた。
「実は…最近、気になることがあって…」しばらくの沈黙の後、少し躊躇しながら口を開いた。
「職場に、佐伯拓斗くんという同僚がいるんです。」彼女は少し戸惑いながら続けた。「最近、彼が急に話しかけてくるようになって…。でも、どうしてなのかがわからなくて…。」
スピカは「大丈夫ですよ。ゆっくり話してくださいね」と優しく促した。
訪問者は目を伏せ、少し不安そうな表情を浮かべた。「私はあまり自分から話すタイプではないですし、そんなに親しく話したこともなかったんです。佐伯くんがどうして私に急に興味を持つようになったのか、それが気になって仕方がないんです。」
スピカは頷きながら、彼女の言葉をしっかりと受け止めた。「それは、不安になる気持ちもわかりますよね。特に、あまり話したことがなかった相手が急に接してくると、戸惑いますよね。」
彼女はスピカの共感に、少しほっとした表情を見せた。「そうなんです。でも、もしかしたら、プロジェクトチームに一緒に入ったからかもしれないと思っていて…。私には、これが普通のことなのか、何か意味があるのかが全然わからなくて。」
スピカは柔らかい笑みを浮かべ、「では、星々の配置を見て、彼の行動がどのような意味を持つのか、少し探ってみましょうか?」と提案した。
訪問者は少し安心したように頷き、「お願いします…」と、期待の眼差しを向けた。
「まずは生年月日を教えていただけますか?出生時間がわかるとより深く見ることができますのでわかるようなら教えてくださいね
そこからあなた専用のホロスコープを見て、自分の性格や今の状況について確認してみましょう」とスピカが尋ねると、少し慌てた様子「1989年の5月12日 出生時間は2時25分です」と答えた。
「慌てなくても大丈夫ですよ」と優しく言いながら、その情報をノートPCに入力し、ホロスコープを丁寧に組み立てていく。訪問者は、スピカが画面を見ながら集中して星の配置を読み解いている様子を、不思議そうに見つめていた。
今さっきまでと同じ人物になのだろうか思えるくらい何かが違っていた。
どう違うのかはわからないし、言葉が出てこない、しかし今声をかけてはいけないことだけは感じることができた。
しばらくして、元に戻ったかのようにスピカは顔を上げて、穏やかな表情で語りかけた。「ホロスコープというのは、あなたが生まれた瞬間に空に輝いていた星々の配置を図に表したものなんです。その時、太陽や月、そして他の惑星たちがどの位置にあったかを示していて、そこからあなたの性格や人生の傾向、運命の流れを読み解くんですよ。」
彼女は少し驚いたように目を見開いた。「星の位置から、そんなにいろいろなことがわかるんですか?」
スピカは頷きながら続けた。「ええ、ホロスコープは人生の地図のようなものなんです。例えば、太陽はその人の本質や人生の目標を、月は心の奥にある感情や無意識の部分を表します。他にも、それぞれの惑星が異なるエネルギーや特性を持っていて、その組み合わせがその人にどのような影響を与えるかが読み取れます。」
訪問者は興味深そうに話に耳を傾けた。「それがわかれば、私のことも少しは見えるんでしょうか?」
スピカはにっこりと微笑み、「もちろんです。ホロスコープから、あなたがどういう方なのか、そして今何を感じているのかが少しずつ見えてきます」と語った。そして、桜子のホロスコープを読み解きながら続けた。
「あなたはとても繊細で、他人の感情に敏感ですね。普段、自分の気持ちを抑えてしまうことが多く、周囲に合わせることを優先する傾向があるようです。」
彼女は驚きの表情を浮かべ、「それ…本当にその通りです。どうしてそこまでわかるんですか?」と尋ねた。
スピカは微笑みながら「星たちは、あなたの生まれた瞬間からその特性を見守り、記録しているんです。そして、それをホロスコープを通じて読み解くことで、あなたの持つ本質や傾向がわかるんですよ」と答えた。
その時、彼女がふと何かを思い出したように慌てた様子で
「あ、ごめんなさい!そういえば、私、まだ名前を言っていませんでしたよね…! 峰木桜子と申します」と、少し顔を赤らめながら恥ずかしそうに名乗った。
スピカはその姿に微笑み、「桜子さん、こちらこそお話を伺えて嬉しいです」と優しく応じた。
桜子は少し照れながらも、「緊張すると、つい慌ててしまうんです…」と笑顔を浮かべ、スピカの温かい態度にさらに心を開いていくのを感じていた。
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