ごく、とこの中の誰かの固唾を呑む音が聞こえた。


俺ら全員の視線の先には、兎に角真に気まずそうにテレテレと汗を飛ばす珍しい竹永がいて、その爪先は今にも引き返そうと僅かにキッチンの方を振り返っていた。



「お疲れ様です」


それに駆け寄る頭のおかしい松方。本来この状況で最も焦るべきは俺らでも竹永でもない。おまえだよ。


「まっ、松、」


震える竹永を心配そうに覗き込んでいる。



「これ何のケーキですか? 誰か誕生日……あ、指にクリーム」



この瞬間、俺らは——俺は直感的に、久々にアレが来る、と確信した。


「ッギャアア!!!!」



パンッ


と、空を切って柔らかい何かが柔らかい何かに当たる音がした。



そして全員が黙った。




「えー…と?」


居た堪れなくなって、最年長の俺が率先して沈黙を打破。俺が直感したのは、松方特有の竹永大好きモード(ムード)で、実際松方は竹永の『指にクリーム』を発見後、背を屈めた。俺と梶の位置からだと松方の背中でギリギリ竹永の顔半分見えるか見えないかだけど凛一と桃ちゃんの位置からだと竹永の指を舐めたか咥えたかした松方が見えたかもしれない。


その後の事は予想してなかった。


既に前の会話、松方の『(致す気)ないと思いますか』発言でいっぱいいっぱいな表情をしていた竹永は、


手にしていたホールケーキを、松方の顔面に打ち付けたのだった。




「ま、松方ー…? 大丈夫?」




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