急に振り返った松方に肩を掴まれ、顔を上げさせられる。



そのまま——噛むような口づけ。



「んむっ!? …っ、ん」



松方の熱くて柔らかい唇が自分のそれに重なって、熱が伝わる。いやでも侵される。


背が伸びたからか、殊更掬われるように、それでも加わる重さに脚の力が入らない。


松方の舌があたしの咥内を侵食する時、薄目で見つめられた視線が揺らいだ。



それで、わかった。



松方が言ったその『自制心』で抑えているものは恐らく、あたしが想像するよりずっとずっと——…



「…ほら、効かなくなった」



糸を引く唇と唇。その隙間で小さく囁いた松方はあたしを軽々と抱え上げ、部屋に戻った。


一瞬、躊躇したような気がしたのは気の所為か、ベッドに寝かされ覆い被さる。



「竹永さん」



「……んぇ…?」


クソ松方の絶対年齢通りじゃないキスにされるがままのあたしは何とか呼び掛けに応じた。




「結婚してください」




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