第26話
授業を終え、岬と校門を潜った時もあたしは目を擦っていた。
「いくみ、あまり擦りすぎない方が」
「んぅー…」
かゆかゆ。
「ま 今日病院いくしもう少しいくなるだろ」
「マスクが苦しそうだよ〜」
「そういえば僕もマスクデビューしてみました」
「えー松方くんがマスクしてどうす―えー!?」
「竹永さんの辛さを少しでも理解できるように」
突如当然の如く岬の隣に召喚された松方の姿に、あたしはブンッと首を振って後ろを振り返った。
ああよかった。
確かにここはあたし達が通う高校の校門を潜った所で合っている。時空を曲げられたのかと。
「ん!?」
「お疲れ様です竹永さん。…岬さん。マスクは眼鏡が曇る点が難点です」
「あ、ああ…?育美の顔がよく見えなくなっちゃうもんね」
何言ってんだと思うと同時にハッキリ頷く眼鏡を曇らせた松方は、流れるような仕草でそれに手をかけた。
「待って松方くん!眼鏡を外すのはだめだと思う!僕は賛成できないなぁ!オーラがあるからさぁ!」
「岬?」
「オーラ?」
「うんオーラ。コーラじゃないよオーラだよ」
「ブッ」
「!!」
思わず噴き出したあたしは身を乗り出して視線を送った松方に気が付かないまま目元を拭う。
「ひ〜~今のツボった〜岬可愛い〜なぁ松方」
「はい」
半分マスクを下げた松方に岬が肩寄せしていることにも気が付かなかった。
「育美、可愛いねぇ」
「ウラヤマシイ」
「それはごめんね。ワタシガオヤジギャグヲカマシタバカリニ」
「明日からギャグの勉強を取り入れることにします」
何故か岬が「ほんとごめん」と言っているのが聞こえ、「私コンビニ寄るね、育美の送り譲ります」と続いた。
「送り?」
「また明日ねいくみきゅん!」
風の様に去る岬。入れ替わる松方。
「僕では不服ですか」
そう柔らかく囁いて、髪に乗っていたらしい桜の花弁を取ってくれた。
見上げた松方はどこか心配そうな表情をしている。
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