第27話

「松方」



「はい」



その時。


ひらひら舞う桜を背景に微笑った松方があまりに…綺麗で。

思わず目を見張ってしまった。


綺麗だ何て、嫌だろうか。


「竹永さん?」


「いや…あ~、その、黒と桜って割と合…いやきれぃだと思っ…」


松方は僅かに首を傾げた。

気不味くなって俯きかけると、すぐ頭上からくす、と幸せそうな音に捕えられる。


「僕もその髪に桜を乗せて目を擦る竹永さんを見つけた時、同じことを想いました」


「っ……聞こえてるし……」


「すみません」


覗いた松方はくすくすと笑っている。



初めて会った時は想像も出来なかった無表情以外の表情は、幸せそうで。



一瞬見えた心配そうな表情のことも忘れてしまった。



「僕は竹永さんの声を聞き逃したりしません」


「はぁ?ヤメロ」


黒い睫毛が白い頬に影を作る。


これは やめません、の応えの代わりだ。



「…松方、また背が伸びた?」


ふと指を伸ばすと松方はそれを受け入れたまま、「そうかもしれないです。もうすぐ身体測定があってそこで明確になりますが」と呟いた後、



「……伸びました?」



と。




また狡く、笑うのだ。

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