第10話

「竹永さん」



「、」


私は目に力を込めて、即興の目力で『何だ?』と言っている風に無言のお答えをした。





「5月です」



「は」



「確かに今日は、5月15日です」




松方はさっきのままの姿勢で、顔で、目で、そう言った。有り難くもわざわざ日にちまで付けて。





「…あ、そう」




まあ、そうだよね。知ってる。だって松方の後ろのカレンダーにそう書いてあるからね。






「…………、」



そう言ったまま私に視線を置いた松方と、何故か向き合ったまま沈黙に入る。






ど ん な 苦 行 だ よ





そう思った矢先、奴は視線をパ、と下に逸らした。私もそれにほっとして(若干勝ったと思って)安堵の息をついた。

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