後輩は、酷くあまく不可解だ
第9話
私は、手を掛けかけていたドアノブから視線を離し、くるりと回って直立で松方の方を見た。
松方の顔は、変わっていない。
念の為。
松方の顔は、変わっていない。
身体の向きをドア方向から松方方向に変えるときに一瞬で短い息を吸ったはいいものの、何せ松方の顔は変わっていないので、息の使い所がなくなってしまった。
そういうわけで、言ってみた。
「…今、何月だっけ松方」
生憎だが、松方の背後にある店長デスクの壁に、思い切り“5月”と書かれたカレンダーは目に入れない。
松方は5秒ほど待った。
果たしてそれは今、何月かを思い出すための時間だったのか。分からないがそういうことにしておく。
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