第6話
更衣室から出てきても、どうやら少しも動いていない松方の頭はそこにあった。
「松方、」
名前を呼んでみる。
しんとする室内は、どうも気まずい。
――言うまでもなくあたしはこのファミレスに学校帰り通い、バイトをしている。歳は十七。
そして目の前で真っ黒な後頭部を披露しているのが、松方(下の名前は知らない)。確か学年は一つ下。
松方は主にキッチンの方に入っているが、あたしが入って一年経つこのバイトにも、最近入って来た。特に関わりがあるわけでもない。
「おーい、松方ー」
再度名を呼んでみるが、反応は返って来ない。爆睡しているのだろうか。
さて、どうするかな。
そう考えた矢先、松方はびく、と肩を動かして起き上がった。
あたしはずるりと肩から落ちた鞄をもう一度肩にかけ直す。
「松方。店長いないんだけど。用済んだなら早く帰りなねー」
「……え」
松方は鼻にかかったメガネを軽く持ち上げて、呆けた頭で少し沈黙をつくった。
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