第3話

あたしは料理名を口に出しながら顔面の主に右側に神経を集中させた。超集中。料理名が合ってるかは本能に任せた。


客の視線の方向的に料理を見ているのかと思いきや、いやこれは明らかにあたしを見ている。




見ているのは確かだけれど、わざわざそれが誰かを確認するためだけに顔を上げるのも惜しい。時間的に、だ。


あと面倒だ。






「…お疲れ様です」




先に発せられたその声を耳にして、一瞬固まった後、ふつふつと込み上げるのは怒りかそれともウザさか。






「…松方」





結局顔を上げると同時に読んだ名前の持ち主は、目が合うと小さく会釈した。






この忙しい時間帯に嫌がらせか…!






荒ぶる感情を小さな理性で抑えつつ、笑顔は見せずに皿を放るように置いてやった。





「嫌がらせか、って思ったでしょう」






なんでバレた。






「別に?」

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