第29話 必ず落とす

 ニーヨガガゴーンラをナワデシバラソードでぶん殴った。


 ニーヨガガゴーンラははじけ飛び、消えていった。


 ナワデシバラさんに恨めしそうな目でにらまれた。


 おそらくサケニノさんに、おしっ〇呼ばわりされていたヤツを、ぶん殴ったからだろう。


 これは謝っておいた方が良さそうだな。



 ナワデシバラさんに謝った。

 許してくれた。



 ステータスを見ておくか。


「経験値が2増えている。他のと変わらないな」


「強さも他の個体と、大差ないように見えたな」

「もしかして、あいつはただの色違いなの?」


「そうかもしれないな」



「シバル、何か落ちていマ~スよ」


「えっ!? ドロップアイテムか!?」


 ニーヨガガゴーンラが消えた場所に、華美な装飾が施された小さなガラス瓶のようなものが落ちていた。


 中にニーヨガガゴーンラと同じ色の液体が入っている。


「凝った入れ物の香水のような見た目だな」


「確かにそう見えなくもないが、中身の色が気に入らんでやんす! 説教しなければでやんす!!」


「落ち着け、酔っ払い!」


「んぴょーんぴょー、んぴょーんぴょー」

「『そんなことより、解説を見よう』と言っているみたいネ~」


「そうだな。コメンタリーオープン」



 名称

 イウォヘラグ聖水。


 解説

 イエローウォーターヘッドラビットグミ(通称、イウォヘラグ)のアブソリュートリードロップ。


 あまり美味しくないが飲める。


 見た目通りの黄色い聖水。


 特別な効果はない。


 一部の好事家に高く売れるらしい。



「あいつニーヨガガゴーンラではないのか? どういうことなんだ?」


「自称がニーヨガガゴーンラで、人間たちには、そこに書いてある名で呼ばれているのではないか?」


「ああ、なるほど、そういうことか」



「アブソリュートリードロップ? なんだそれは?」


「んぴょー、んぴょー、んぴょー、んぴょーんぴょーんぴょー」

「『アブソリュートリーは、絶対的に、完全に、無条件にという意味』と言っているみたいで~す」


「ということは、必ず落とすということなのか」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


「必ず聖水を落とすんでやんすか!? なんてけしからんでやんす! 説教でやんす!!」


 サケニノさんが、ニーヨガガゴーンラが消えた場所に向かって、説教をし始めた。


「あれは放っておこうか」


「ああ、それが良いぜッ」



「これは取引用のアイテムなのかな?」


「そのようだな」

「最悪、飲めるみたいだけどね」


「あまり飲みたくはないなぁ」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。



「これは保管しておくか」


 イウォヘラグ聖水を、アイテムボックストッキングの中に入れた。


 それじゃあ、狩りを再開しようか。



 ダンジョン内を歩き回りながら、水頭モンスターを狩りまくった。


「ん? なんだこの音楽は?」


 突然、気が抜けるような間抜けな音楽が聞こえてきた。


「脱力してしまうような音だな」

「なんなの、これ?」


「んぴょー」

「私たちにも聞こえまシ~タよ」


「わたしもでやんす~。あ~、なんか力が抜けるでやんす~」


「みんなにも聞こえたのか。あれはなんだったんだ?」


「んぴょーんぴょーんぴょー」

「『レベルが上がっている』と言っているみたいヨ~」


「レベルが? なら、あれはレベルアップの効果音なのか?」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


「変な音に変更されたもんだな」


「モンスターがいる場所だというのに迷惑な話だぜッ」


「まったくだな」


「お前ら、油断するんじゃねぇぞッ」


「そんなの当然でやんすよ~」


「すでに油断してるぞ、酔っ払い」



 ステータスを見てみた。


 確かにレベルが上がっているな。

 レベル11だ。


「えっ!? ステータスの上昇量が上がっているぞ!?」


 いままでHPは5、他の項目は1~2上がっていたのが、HPは10、他の項目は2~4上がっている!?


 シバルのレベル11のステータス(カチューシャ込み)

 HP:60/60 MP:0/0 攻撃力:28 防御力:27

 魔法攻撃力:5 魔法防御力:16

 素早さ:17 器用さ:30 筋肉:17

 変態力:超すごい数値


 シバルのレベル10のステータス(カチューシャ込み)

 HP:50/50 MP:0/0 攻撃力:24 防御力:23

 魔法攻撃力:5 魔法防御力:14

 素早さ:15 器用さ:26 筋肉:15

 変態力:超すごい数値


「んぴょー!」

「レルのステータスも、いままでの倍上がっていマァス!」


 ナワデシバラのレベル11のステータス

 HP:60/60 MP:0/0 攻撃力:23 防御力:27

 魔法攻撃力:0 魔法防御力:11

 素早さ:13 器用さ:1 筋肉:12

 変態力:超すごい数値


 ナワデシバラのレベル10のステータス

 HP:50/50 MP:0/0 攻撃力:19 防御力:23

 魔法攻撃力:0 魔法防御力:9

 素早さ:11 器用さ:1 筋肉:10

 変態力:超すごい数値


「わたしもでやんすよ~」


 サケニノのレベル11のステータス(最も酔いが軽い時)

 HP:60/60 MP:0/0 攻撃力:23 防御力:27

 魔法攻撃力:0 魔法防御力:11

 素早さ:12 器用さ:12 筋肉:12

 変態力:超すごい数値


 サケニノのレベル10のステータス(最も酔いが軽い時)

 HP:50/50 MP:0/0 攻撃力:19 防御力:23

 魔法攻撃力:0 魔法防御力:9

 素早さ:10 器用さ:10 筋肉:10

 変態力:超すごい数値



「レベルアップまでの経験値の量が倍になったから、上昇量まで倍になったのか?」


「そうだと思いマ~スよ」


「良いんだか、悪いんだか、よく分からないなぁ」


「まあ、どうでもいいんじゃないでやんすか~?」


「そこの酔っ払い、いい加減、気を引き締めろ!」


「は~い、引き締めたでやんすよ~」


「全然締めてないだろ!」


 ああ、やれやれ……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る