第27話 VSボス?

 俺たちはボス部屋の扉の前に移動した。


 ん?

 あれ?


 部屋の中には、誰もいなかった。


 部屋の造りは、他とほぼ同じだ。


「なんでいないんでやんすか!? 出て来いでやんす!!」


 これはいったいどういうことなのだろうか?


「まさかこのわたしに恐れをなして、逃げ出したのでやんすか!?」


「いや、それはないだろ」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


「ああ、それはねぇなッ」

「間違いねぇぜッ」


「そこ、うるさいでやんすよ!!」



「本当に、なんで誰もいないんでしょうネ~?」


「あの看板と扉は、わなだったとか?」


「その可能性もありそうデェスね」


「んぴょーんぴょーんぴょーんぴょーんぴょー、んぴょーんぴょーんぴょーんぴょーんぴょーんぴょーんぴょー」


「えっ? 今度はなんて言っているんだ?」


「『全員部屋に入らないと出て来ない、扉を閉めないと出て来ないという可能性もある』と言っているみたいデ~ス」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


「なるほど、それもありそうだな」



「うっ、腹が痛くなってきたでやんす…… ボスさん、早く出て来てでやんす…… このままでは乙女の尊厳がマズいことになってしまうでやんすよ……」


 サケニノさんが腹を抑えて苦しみ出した。


「では、扉を閉めてみるか」


「ちょ、ちょっと待ってでやんす!! それはちょっと怖いでやんす…… みんなも来て欲しいでやんす……」


「仕方ないなぁ。ナワデシバラさん、それで良いか?」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


「じゃあ、行こうか」



 俺たちはボス部屋の中に入った。


 しかし、ボスは出て来なかった。


「何も起こらないデェス」


「これは入るだけでは、ダメってことなのかな?」


「うむ、そのようだな」


「ああああああああああああああああああっ、これは、これはマズすぎるでやんす!! このままでは、キッコウ君が変な扉を開いてしまうでやんす!! ボスさん、いや、ボス様、早く出て来てくださいでやんす!!!」


「何を言っているんだ、あの酔っ払いは!?」


「放っておけ」

「それよりも、扉を閉めてみたら?」


「そうだな」



 扉を閉めた。


「んぴょーっ!?」


「ん? どうしたんだ、ナワデシバラさん?」


「シバル、後ろだ!」

「部屋の中央を見て!」


「えっ?」


 振り返ると、奇妙なものが浮いていた。


 濃紺色の巨大な2段型の弁当箱のような何かだ。


 大きさはワンボックスカーくらいある。


「な、なんだありゃぁっ!?」


「よく分からないデ~ス!」

「いきなり現れたのヨ~!」


「もしかして、あれがボスなのか!?」


「いいや、違うぞウサポス~」


 2段型の弁当箱が、そう言った。


「えっ!? なら、なんなんだよ!?」


「我が名は『ポス』だウサポス~。入り口の看板に書いてあっただろウサポス~」


「あ、ああ、確かに書いてあったな」


 あれ、こいつの名前だったのかよ!?

 ボスがいるって、意味じゃなかったのか!?

 紛らわしいな!?



「君は襲ってくるのか?」


「うむ、なぜかは知らんが、そうしなければいけない気がするウサポス~」


 こいつもモンスターみたいだな。



「では、ゆくぞウサポス~」


 ポスがそう言った直後、弁当箱が開き始めた。


 そして、上段の蓋と箱、下段の蓋と箱、箸のように見える2本の長く白い棒に分かれた。


 いったい何をするつもりなんだ!?



 下段の蓋と箱が、俺に向かって来た。


 なかなか速いが、避けられないというほどではないな。


 俺は右側に走り、蓋と箱を避けた。



「ぐっ!?」


 だが、避けた先に箸のようなものがいた。


 俺は箸のようなものに、胴体をつままれてしまった。


 そして、そのまま箱の中に入れられ、蓋を閉められてしまった。



「なんだこいつ!? 何をする気なんだ!?」


 ん?

 なんか音がするな。

 ガチャガチャといった感じの。


「シバル、どうやら分散していたものが、また集合したようだぞ」


 なら、あれは組み立てる時の音だったのか。



「んぴょー!」

「なんなの、これでやんす! 出してでやんす!」


 上の方から、ナワデシバラさんとサケニノさんの声が聞こえてきた。


「みんなも捕まったのか!?」


「そうなんでやんすよ! うぐっ、は、腹が…… 痛すぎるでやんす……」


「おい、大丈夫なのか!?」


「も、もうダメでやんす…… ナワデシバラさん、ごめんなさいでやんす…… キッコウ君は耳を塞いで欲しいでやんす……」


「んぴょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」


「シバル、レルが大ピンチデ~ス!!」

「早くなんとかしてあげてヨ~!!」

「こいつをぶっ壊してくだサァイ!!」


「ああ、やってみる!」


 俺は弁当箱を、全力で何度も蹴ってみた。


 だが、破壊することができなかった。



「ん? なんか暑くなってきてないか?」


「むっ? 我には分からんな」

「私も分からないわね」


「んぴょーんぴょー!」

「シバル、レルが『暑くなっている』と言っていマ~スよ!」


 今度はなんなんだ!?



「熱っ!? なんだこれ!? 壁がものすごく熱いぞ!?」


「これは攻撃だ!」

「中のものを熱して倒すつもりよ!」


「な、なんだって!?」


 これはマズい!

 早くなんとかしなくては!!

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