第24話 お得なレアドロップ?

 飛んで来たベレホブラマグの4本の足が、鋭い爪で立て続けに攻撃してきた。


 くそっ、かわし切れない!?


 体の各所に痛みが走る。


 マズい!

 このままでは防戦一方だ!!


 どうすれば良いんだ!?



 と思っていたら、なぜか突然すべての足がいっせいに消えていった。


「えっ!? なんだこれ!? なんで消えたんだ!?」


「んぴょー!」

「それはレルが倒したからデ~ス!」


「な、なんだって!? どうやって倒したんだ!?」


「あのモンスターは足を飛ばしている間、体を動かせないみたいなのヨ~」


「だから、シバルが攻撃されているうちに近付いて、レルのジャンピング武器化ボディプレスをくらわせて倒しまシィタよ」


「そうだったのか! ありがとう、助かったよ、ナワデシバラさん!」


「んぴょーんぴょー!」

「『どういたしまして』と言っているみたいデ~ス」



「それにしても、派手にやられたなぁ」


 体中、引っかき傷だらけだ。


「これは、すぐに治療する必要があるでやんす!」


「いま医療品なんて持ってないだろ。仕方ない、またモンスターを探すか」


「せっかく勝ったのに、こんなことになるなんて、ひどすぎるでやんす!」


「回復魔法でもあれば良いのにな」


「まったくでやんすね!」


「んぴょー!」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。



「そういえば、ドロップアイテムと経験値は?」


「ドロップアイテムはなしデ~ス」

「経験値は1増えていたわヨ~」


「あいつも1なのかよ。少なすぎるだろ」


「まったくでやんす! ケチすぎるでやんす!!」


「んぴょー!」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。



「それじゃあ、モンスターを探しに行って来る。リスポーンポイントで合流しよう」


「了解でやんす」

「んぴょー」




 目が覚めた。


 体に痛みはない。

 傷もなくなっている。

 良かった。


 いや、死んでしまったのは良くないことか。

 すっかり感覚がおかしくなっているなぁ。



 葉とカチューシャを装備し直し、ナワデシバラさんたちと合流した。


「それじゃあ、レベル上げを再開するか」


「んぴょー!」

「了解でやんす!」



 山の中を歩き回りながら、モンスターを倒していった。


 途中、ベレホブラマグに攻撃されて、崖から落ちて、リスポーンポイント行き。


 ベレホブラマグに攻撃されて、斜面を転がり落ちて、木にぶつかって、リスポーンポイント行き。


 夜にベレホブラマグに不意打ちされて、リスポーンポイント行き。


 川原で転んで、頭を岩にぶつけて、リスポーンポイント行き。


 なんてこともあった。


 そして……



 くたばりやがれ!

 俺はホイホブラマグを踏み付けた。


 ホイホブラマグは消えていった。


「おっ、いつものおどろおどろしい効果音だ。レベルが上がったようだな」


 ステータスウィンドウを見ると、レベルが9になっていた。

 ステータスの上がり方は、いままでと同じだ。


「んぴょー!」

「レルも上がったと言っていマ~ス」


「わたしも上がったでやんす!」



「あっ、何か落ちているわよ!」


「えっ!?」


 足元に、すべて同じデザインの白いサンダルが10足も落ちていた。


 つま先の部分が、アニメ風のウサギの頭部になっている。

 足首を固定するバンドがある。


「こ、これはサンダルでやんすか!?」


「そうみたいだな!」


「やったでやんす! ついに裸足卒業でやんす!!」


「ああ、やったな!!」

「んぴょー!!」



「さっそく履くでやんす!」


「いや、その前に解説を見てみようか。変な効果があったら困るしな」


「それもそうでやんすね」


 コメンタリーオープン。



 名称

 ホワイトイヤーホワイトブルーラビットマウンテングミとは、そこまで関係ないデザインのサンダル。お得な10足セットです。


 解説

 ホワイトイヤーホワイトブルーラビットマウンテングミ(通称、ホイホブラマグ)のレアドロップ。


 食べられない。


 名称通りの白いウサギのサンダル。


 粗悪品で壊れやすい。

 酷使すると、すぐに壊れる。

 戦闘で使うのはやめておこう。


 このサンダルは、履いた人にピッタリのサイズになる。

 この効果は、初回限定なので要注意。


 装備しても、ステータスは上がらない。

 もしかしたら、変態力は上がるかもしれない。



「妙な名称のサンダルだな」


「そこまで関係ないなら、こんな長い名前にしなければ良いのにでやんす」


「まったくだな」



「レアドロップなのに、一気に10足も入手できるのかよ」


「せっかくのレアなのに、ありがたみが薄れるでやんす! これを設定したヤツは、ゲームを分かっていないでやんす!!」


「んぴょー!」

「『その通り!』と言っているみたいネ~」



「戦闘では使えないのか」


「なら、モンスターのいる場所では履けないな」

「本当に粗悪品ね」


「まったくでやんす」


「仕方ない、こいつは町を歩く時に履こう」


「分かったでやんす」

「んぴょー」



「サイズが変わるのかよ!? 粗悪品なのに、とんでもない機能があるんだな」


「ファンタジーでやんす! さすがはゲームのような世界でやんすね!!」


「ああ、そうだな」



「それじゃあ、これは使用する時まで、俺が預かっておくよ」


「了解でやんす」

「んぴょー」


 サンダルをアイテムボックストッキングの中に入れた。



「そろそろダンジョンに行かないでやんすか? 山歩きは、もう飽きてきたでやんす」


「俺は構わないぞ」


「んぴょーんぴょー」

「『私も構わない』と言っているみたいデェス」


「では、またダンジョンに行こうか」

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