第22話 スペシャルドロップ

 熟考した結果、レベルを上げてナワデシバラさんで殴るのが、最良だという結論が出た。


 では、みんなに提案してみるか。



「ここはもう一度、草原でレベル上げをすべきじゃないか?」


「それしかなさそうでやんすね」


「いや、そうでもないぞ」

「この山のモンスターと戦うというのはどうだ?」


「ええ~、嫌でやんすよ。戦いにくそうでやんす」


「そこも修行だ」

「それに同じモンスターばかり相手にしていては、技術が磨かれないぞ」


「それもそうだな。よし、山で戦おうか!」


「んぴょー!」

「仕方ない、そうするでやんす」



 ダンジョンを出て、山の中を歩いている。


「このあたりは木が多くて、ナワデシバラさんを振り回せないな」


「それなら短く持ってみたらどうだ?」


「短くか……」


 どこを持てば良いのだろう?


 腰のあたりを持てば良いのかな?

 それとも、太ももだろうか?


「んぴょーっ!? んぴょーんぴょーっ!!!」


「えっ? なんだって?」


「『シバルは変態だ』と言っているみたいデ~ス」


「なんでだよ!?」


「んぴょーんぴょーんぴょーんぴょーんぴょーっ!!」

「『なんかそんな顔していた!!』と言っているみたいデ~ス」


「確かに、そんな顔してたでやんす! いったいどこを持つつもりだったんでやんすか!? キッコウ君の変態でやんす!!」


「誤解だ!? 変態的なことなんて考えてねぇよ!!」



「なら、どうすれば良いんだよ?」


「んぴょー、んぴょーんぴょーんぴょーんぴょー」

「『とりあえず、武器化を使わずに戦ってみよう』と言っているみたいネ~」


「大丈夫かな?」


「前よりレベルが高いし、なんとかなるでやんすよ」


「楽観的だなぁ」



「変なニンゲン発見ウサッ!」


 富士山の模型のような姿のモンスターが現れた。


「こいつ、見覚えあるな。なんてヤツだっけ?」


「確か『ホブラマグ』ではなかったか?」


「そうなのか?」


「合ってるウサッ」



「それじゃあ、死んでもらうウサッ! くらえウサッ!」


 ホブラマグが山頂の部分を俺に向けて跳んで来た。


 速いけど、反応できないほどではないな。


 俺は跳んで来たホブラマグを捕まえた。

 そして、近くの木にたたき付けた。


 ホブラマグは消えていった。


 では、ステータスチェックだ。


「経験値が1増えている。倒したみたいだな」


「わたしも1増えてるでやんす」


「んぴょー」

「レルも1増えてマ~ス」



「楽勝だったでやんすね!」


「ああ、レベルが上がったおかげだな。それじゃあ、次を探そうか」


「うむ、そうしよう」

「油断はするなよ」


「分かってるって」


 痛い目を見たからな。



 突然、やぶの中から奇妙な物体が出て来た。


 頭頂部に白いウサギの耳のようなものが付いた、富士山の模型のような何かだ。


 模型の大きさは、ホブラマグと同じくらい。

 耳のようなものの長さは、20センチくらいだ。


「むっ、変なニンゲン発見ウ~サ! 死ねウ~サ!」


 ウサギの耳が付いた富士山の模型が、そう言った。


 そして、ウサギの耳を俺に向け、撃ち出してきた。


 ええっ!?

 それを撃ってくるのかよ!?


 だが、こいつも反応できないほどの速さじゃないな。


 俺は飛んで来た耳を、両手で1本ずつつかみ取った。


 そして、ウサギの耳が付いた富士山の模型を踏み付けた。


 ウサギの耳が付いた富士山の模型は消えていった。

 つかんでいた耳も消えていった。


 では、ステータスチェック。


「1増えてる。倒せたようだな」


「んぴょー」

「レルも1増えてマァス」


「わたしもでやんすよ」



「むっ、シバル、何か落ちているぞ!」


「えっ!?」


 足元に白いウサギの耳が付いたカチューシャが落ちていた。


「これはさっきのモンスターの耳に似ているな。耳の加工品なのだろうか?」


「そうかもしれんな」


「まあ、とりあえず、解説を見てみるか」


「わたしも見るでやんす!」

「んぴょー」


 コメンタリーオープン。



 名称

 ホイホブラマグカチューシャ。


 解説

 ホワイトイヤーホワイトブルーラビットマウンテングミ(通称、ホイホブラマグ)のスペシャルドロップ。


 食べられない。


 ホイホブラマグの耳っぽいものが付いているカチューシャ。


 耳は模造品。

 本物ではない。


 頭部に装備すると、攻撃力、防御力、魔法攻撃力、魔法防御力、素早さ、器用さ、筋肉のステータスが5上昇する。


 変態力が上がる場合もある。


 とても壊れにくい。



 あいつ、こんな名前だったのか。

 妙な名前だな。


 ウサギで山でグミなのか。

 訳が分からんなぁ。


 まあ、そんなのどうでもいいか。



「スペシャルドロップ? そんなのもあるのか」


「レアとこれ、どっちが出にくいんデ~スか?」


「分からないな。みんなは知ってるか?」


「んぴょーんぴょー」

「『私も分からない』と言っているみたいネ~」


「わたしも分からないでやんすよ」


「そうか」



「な、なんだと!? こんなのでステータスが5も上がるのかよ!?」


「すごすぎるでやんす!?」


「んぴょーっ!?」


「これは装備するしかないでやんすよ!!」


「ああ、そうだなッ」

「ええ、装備しないなんて、もったいなさすぎまッす」


「誰が装備するんだよ?」


「シバルだな」

「そうね」


「んぴょーんぴょーんぴょー!」

「『シバルが装備するべき!』と言っているみたいデ~ス」

「そうネ~。レルは武器になるからネ~」


「キッコウ君しかいない思うでやんすよ」

「ああ、その通りだぜッ」

「酔っ払いでは、そいつを生かしきれねぇからなッ」


「やっぱりそうなるのか?」


「なるでやんすね」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。



「では、装備してみるか。あまり気は進まないがな……」


 俺はホイホブラマグカチューシャを装備した。


「おおっ!? なんだこれは!? 力がみなぎってくるぞ!! これがこのカチューシャの力なのか!? すごすぎる!!」


「ただ、見た目も、より変態的になっているがな」

「そうね。ウサギの耳と葉っぱしかないからね」

「ひどい有様デ~ス」

「こいつは変態だぜッ」


「やかましい! そこは仕方ないだろ!!」

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