第21話 もっと簡単に倒したい

「走り回って疲れたでやんす。これで経験値が2しか手に入らないなんて、ひどいでやんす。割に合わないでやんす」


「だが、水筒を落とすまで、ここのモンスターと戦わなきゃいけねぇんだろッ?」


「うう…… その通りでやんす」


「これはもっと簡単に倒す方法を考えた方が良いみたいでッすね」


「そうだな。とはいえ、どうすれば良いのだろうか?」


「射出物をかわしながら近付いて、ぶん殴って倒せば、短時間で終わるぜッ」


「かわすのに精一杯な現状では無理だって。それができるようになるのは、何レベルなのだろうか?」


「なら、またレベル上げをするのデ~スか?」


「え~、またでやんすか? もう飽きたでやんすよ」


「なら、どうするんだよ?」


「分からないでやんす。キッコウ君、何か考えてでやんす」


「お前なぁ!?」


 面倒な酔っ払いだな!



「そういえば、あのモンスター、部屋の中央から動かなかったなッ」


「ああ、確かにそうだな」


「なら、アルコールシェアが効くまで、扉の陰に隠れて待てば良いんじゃねぇかッ?」


「えっ!?」


「名案でやんす!」


「そんなことできるのか!?」


「そこは試してみるしかねぇなッ」


「キッコウ君、やってみようでやんす!」


「そうだな。試してみるか」


「んぴょー」

「レルもそれで良いみたいデェス」


「それじゃあ、モンスターを探すとしようか」



 扉を開けると、部屋の中央に石に囲まれた小さな泉があった。


 他の部分は、他の部屋と同じような造りだ。


「なんでこんなところに泉があるんだ?」


「キッコウ君、あれはきっとゲームによくある、回復の泉でやんすよ!」


「えっ? まあ、確かによくあるけど、あれがそうとは限らないぞ」


「いいや、あれは回復の泉でやんす! さっそく飲むでやんす! 突撃でやんす!!」


 サケニノさんが泉に向かって行った。



「おおっ、キレイで美味しそうな泉でやんす! いただきますでやんす!」


 サケニノさんが泉の水を、手ですくって飲んだ。


「冷たくてうまいでやんす! 走り回ったあとの、冷たい水は最高でやんすね!!」


 サケニノさんは泉の水を飲みまくった。



「あ~、飲んだ飲んだでやんす! ごちそうさまでやんす!!」


「それじゃあ、サケニノさん、健康診断をしようか」


「キッコウ君が健康診断でやんすか!? 変態でやんす!」


「何言ってんだよ!? ステータスウィンドウを見せろと言っているだけだぞ!?」


「いや~、変態でやんす! 変態葉っぱ野郎に健康診断されるでやんす!!」


「うるせぇ! さっさと出せ!!」



 サケニノさんのステータスウィンドウを見てみた。


「あっ!?」


「どうしたでやんすか?」


「健康度がどんどん下がってるうえに、コメント欄に『危険物が体内に侵入』と書いてある」


「ええっ!? なんででやんすか!?」


「んぴょーんぴょーんぴょーんぴょーんぴょー」

「『この泉はわなだったということね』と言っているみたいネ~」


「な、なんだってでやんす!? どうしようでやんす!?」


「モンスターを探そうか」


「うう…… 仕方ないでやんす。うっ、腹が痛くなってきたでやんす…… こ、これはマズいヤツでやんす…… 乙女の尊厳が大ピンチでやんす……」


「ちょっと近くを見てくる!」


 こんなところで漏らされても困るからな!



 俺は扉を開けた。


 すると、部屋の中央に、チヂイマダカーグがいた。


「おい、いたぞ!」


「了解でやんす! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ、そこのモンスター、このわたしと勝負でやんすぅぅぅぅぅっ!!!!!」


 サケニノさんがモンスターに突撃して行った。


「ぬぼぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」


 そして、やられた。


 その後、サケニノさんの体は消えていった。


 死ぬとああいう風になるのか。



 ダンジョンの入り口に戻り、サケニノさんと合流した。


「サケニノさん、大丈夫か?」


「ひどい目に遭ったけど、わたしは元気でやんす」


「それは良かった。それじゃあ、さっきのモンスターにアルコールシェアを試してみようか」


「人使いが荒いでやんす」


「うるさいな。ほら、行くぞ」



 泉の部屋まで戻って来た。


 そして、隣の部屋の扉を開けた。


 部屋の中央にチヂイマダカーグが浮いていた。


「よし、頼むぞ、サケニノさん」


「了解でやんす! よし、あいつを敵と認識したでやんすよ!!」


「そうか。いまのところ、特に変化はないみたいだな」


「まだ効いてねぇみてぇだなッ」


「それじゃあ、効くまで待つでやんす」


「ああ、そうだな」



     ・

     ・

     ・

     ・

     ・

     ・



「まだ変化はないようだな」


「暇でやんすね」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。



     ・

     ・

     ・

     ・

     ・

     ・



「全然効かねぇぜッ」

「ああ、そうだなッ」


「暇すぎるでやんす。キッコウ君、何か面白いことやってでやんす」


「すぐそこにモンスターがいるんだぞ。油断するなっての」



     ・

     ・

     ・

     ・

     ・

     ・



「ん? なんかフラフラしていマ~スよ」

「これは成功したんじゃないノ~?」


「そうみたいだな。よし、いくぞ、ナワデシバラさん」


「んぴょー!」



 俺は武器化したナワデシバラさんを持って、チヂイマダカーグに向かって行った。


 攻撃が来ないな。


 酔っ払っていて、それどころではなくなったのか?



 くらいやがれ、チヂイマダカーグ!

 ナワデシバラソード縦一文字斬り!!


 俺はナワデシバラさんを全力で振り下ろした。


 チヂイマダカーグをたたき潰した。


 いちおう確認しておこう。

 ステータスオープン。


 また経験値が2増えている。

 どうやら倒したようだ。


 ドロップアイテムは……


 落ちてないか。

 残念。



「お見事でやんす!」


「ああ、ありがとう」


「勝ったのはめでてぇが、この戦法は時間がかかりすぎだなッ」


「そうデ~スね」

「他の方法を考えた方が良いみたいデェスね」


「そうだな」


 さて、どうするかな?

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