第20話 再びダンジョンへ
俺たちは水筒のダンジョンに、再挑戦することにした。
山を登り、ダンジョンに入った。
内部は相変わらず、水筒の中みたいだな。
「水筒ダンジョンよ、わたしは帰って来たでやんす! 今度こそ、水筒と宝箱を手に入れてみせるでやんす! 覚悟しやがれでやんす! ふはーっははははははははははっ!!!!!」
「俺たちの縛りでは無理だっての。それじゃあ、先に進もうか」
「んぴょー」
ナワデシバラさんが首を縦に振った。
扉を開けると、部屋の中央に奇妙なものが浮いていた。
直径1メートルくらい。
全身水のようなもので作られている。
人の頭に似ている。
このような姿の何かだ。
他の部分は、他の部屋と同じような造りだ。
「あれは、前、会ったヤツに似ているな」
「うむ、形は違うが、体の質感は同じだな」
「攻撃方法も同じかもしれないわよ。気を付けましょう」
「そうだな」
「んぴょー」
ナワデシバラさんが首を縦に振った。
「あっ、あいつ、あいつは水筒を落とすヤツでやんす!!」
「えっ!? そうなのか!?」
「いや、それはおかしいぜッ」
「オレたちは落とすヤツの情報なんて手に入れてねぇぞッ」
「なら、サケニノさんは、なぜ断言したんだ?」
「そんなの見れば分かるからでやんす!」
「どういうことだよ?」
「それはあいつが水の頭だからでやんす!」
「意味が分からないのだが」
「はぁ、キッコウ君は物分かりが悪いでやんすね。仕方ない、教えてあげるでやんす。あれは水の頭でやんす。それを漢字で書くと『
「要するに、酔っ払いの親父ギャグかよ!?」
くだらなさすぎる!
真面目に聞いて損したぞ!!
「話は終わったかウサ~?」
水人頭が話しかけてきた。
「えっ、ああ、終わったぞ。わざわざ待っていてくれたのか?」
「そうだウサ~」
「それはすまなかったな」
意外と律義なヤツだなぁ。
「ようこそ、諸君ウサ~。我が名は『チヂイマダカーグ』だウサ~」
律義なヤツみたいだし、俺も名乗っておくか。
「君は襲ってくるのか?」
「うむ、その通りだウサ~。なぜかは知らんが、そうしなければいけない気がするウサ~」
「そうなのか」
やはりこいつもモンスターなんだな。
「ゆくぞウサ~!」
チヂイマダカーグがそう言い終えた直後、額のあたりから何かを撃ち出してきた。
俺は左に跳び、射出物を避けた。
「避けれた! みんな、無事か!?」
「んぴょー!」
「私もなんとか避けたでやんす!」
「よし、みんなで攻撃だ!」
「んぴょー!」
「了解でやんす!」
「そうはさせんウサ~!」
チヂイマダカーグが、また何かを撃ち出してきた。
俺はまた左に跳び、射出物を避けた。
俺たちはチヂイマダカーグの攻撃を避けるために、部屋の中を逃げ回っていた。
くそっ、攻撃が激しくて近付けない!
こんなのどうすれば良いんだ!?
「シバル、いったん部屋の外に出た方が良いのではないか?」
「ああ、そうだな。そうしよう」
「他の者たちには、我々が伝えてこよう」
「頼む」
俺たちは部屋の外に出た。
部屋に入って来た時、扉を開けっぱなしにしていて助かったな。
チヂイマダカーグは追って来なかった。
「さて、どうする? ダンジョンを出て、またレベル上げをするか?」
「うう…… 悔しいけど、それしかなさそうでやんすね」
「いや、待つんだ。あの頭を見ろ」
「少し小さくなってないか?」
「えっ?」
チヂイマダカーグをよく見ると、少し小さくなっているように思えた。
「ああ、確かにそんな感じがするな。どういうことなのだろうか?」
「もしかすると、あいつ、自分の体を撃ち出しているんじゃないの?」
「どうなんだろう? ちょっと射出物を確認してきてくれるか?」
「良いだろう」
「確認して来たぞ」
「あいつの体と同じようなものが、壁に付着していたわ」
「そうか。なら、体の一部を切り取って撃っていると判断して良さそうだな」
「しかも、射出物が体に戻る様子はなかったぞ」
「なら、あのまま撃たせておけば、あいつの体はなくなったのだろうか?」
「不明だ」
「そこまで間抜けではないんじゃないの?」
「結局のところ、試してみるしかないな」
「そうだな。では、どうする? 部屋に戻って、避け続けてみるか? それとも、レベル上げをするか?」
「んぴょーんぴょーんぴょー。んぴょーんぴょーんぴょーんぴょー」
「『負けっぱなしは悔しい。勝ち目があるなら戦うべき』と言っているみたいデ~ス」
「わたしも悔しいでやんす! やってやるでやんす!!」
「よし、なら、戻って避け続けるか。まあ、もっとも、隙があったら攻撃しても良いけどな」
「んぴょー!」
「勝つでやんすよ!」
俺たちはチヂイマダカーグのいる部屋に戻った。
チヂイマダカーグは再び俺たちに攻撃を開始した。
俺たちはそれを避け続けた。
あいつ、体がどんどん小さくなっているのに、全然気にしないんだな。
変なヤツだな。
そして、とうとうチヂイマダカーグは、手のひらサイズの球体になってしまった。
さらに、なぜか攻撃してこなくなった。
「これで撃ち止めか?」
「シバル、あの球体を破壊しろ!」
「えっ!? なぜ!?」
「いいから早くやれ!」
「分かった!」
俺は球体をつかみ、床に
球体は
これで倒したのかな?
確認してみるか。
ステータスオープン。
「経験値が2増えている」
「んぴょー」
「レルのところもデェス」
「わたしも増えてるでやんす!」
「どうやら倒せたようだな。良かった」
「よくやったぞ、シバル」
「ありがとう。ところで、なぜあの球体を破壊しろと言ったんだ?」
「撃ったものが動き出していたのだ」
「多分あのまま放置していたら、元に戻ったんじゃないの?」
「なるほど。要するに、あいつは体の一部を切り取って撃ち続け、撃ち終わったら体を回収、これを繰り返すヤツというわけか」
「そして、元に戻るまでの間は攻撃できないという、明確な隙があるわけでやんすか。ゲームの敵っぽいヤツでやんすね」
「そうだな」
「ドロップアイテムはなしか」
「んぴょー」
「『仕方ない』と言っているみたいネ~」
「そうだな。1回で出てくれるほど、世の中は甘くないよな」
「甘くても良いのにでやんす」
「まったくだな」
でも、それでは縛りプレイにならないけどな。
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