第12話 全裸登山

 いつもの場所、いつもの格好で目が覚めた。


 体調に問題はないみたいだな。


 念のために、ステータスを見てみるか。

 ステータスオープン。


 よし、健康度は100になっているぞ。



「んぴょーっ!」


 ナワデシバラさんがやって来た。


 あっ、そうだ。

 前をキチンと隠さないとな。



「ナワデシバラさん、健康度は戻ったか?」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


「そうか。それは良かった」


「んぴょーんぴょーんぴょー?」

「『シバルは大丈夫なの?』と言っているみたいデ~ス」


「ああ、俺の方も100になっていたよ」


「んぴょー」

「『良かった』と言っているみたいデ~ス」


「お気遣いありがとう」



「今回はちゃんと隠してマ~スね」

「偉いデェス」


「いや、偉くはないだろ。服を着ているのが普通だからな」


「変態的な格好の人しかいないから、感覚がおかしくなりそうヨ~」


「ならないようにしろっての!」



「さて、水はどうしようか?」


「んぴょーんぴょーんぴょーんぴょーんぴょー?」


 ナワデシバラさんが川の方に左足を向けた。

 そして、その足を左に移動させた。


「これは何をしているのだろうか?」


「『川の上流に行ってみるのはどう?』と言っていると思いマ~ス」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


「湧き出たばかりの水なら、飲めるかもしれないってことか?」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


「なるほど、あり得るかもな。他に当てもないし、行ってみるか」


「うむ、そうだな」


「んぴょーんぴょーんぴょーんぴょーんぴょー、んぴょーんぴょーんぴょーんぴょー。んぴょーんぴょーんぴょーんぴょー」


 ナワデシバラさんが何度か首を横に振りながら、そう言った。


「今度はなんだ?」


「『どのくらい歩くことになるか分からないから、なるべく消耗を避けるべき。モンスターと戦わないように進もう』と言っている気がしマ~ス」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


「分かったよ。では、出発しようか」



「当たり前かもしれないけど、山の方に向かっているな」


「んぴょーんぴょーんぴょー」

「『それはそうでしょうね』と言っているみたいデ~ス」


「異世界でも、川の仕組みは変わらないみたいだな」


「んぴょーんぴょー!」


「ん? どうしたんだよ?」


「『くだらないダジャレだ!』と言っているみたいネ~」


「はぁ?」


「『の仕組みはらない』の部分がダジャレになってマ~ス」

「実にくだらないデェス!」

「もっとセンスを磨け、シバル」


「そんなつもりで言ったんじゃねぇよっ! ただの偶然だってのっ!!」



 山の麓にやって来た。


「ここからは登山か。まさかこんな格好で登ることになるなんて、夢にも思わなかったぞ」


「んぴょー」

「『私もよ』と言っているみたいデ~ス」


「変態コンビの山登りか」

「世も末だな」

「嘆かわしいデェス」


「やかましい!!!」

「んぴょーっ!!!」



 登山を開始した。


 草原も歩きにくかったけど、ここはさらに歩きにくいな。


 早く靴を入手したいものだな。


 誰が落とすのだろうか?


 そもそも落としてくれるモンスターはいるのだろうか?


 いてくれよ!

 頼むぞ!!



「ん? 人の声が聞こえた気がするぞ」


「んぴょーんぴょー」

「レルも聞こえたみたいデ~ス」

「私も聞こえたわヨ~」


「なら、聞き間違いではないようだな。接触してみるのは…… 無理か」


「うむ、その格好では無理だな」

「見事なまでの変態だからな」


「いちいちうるさいっての!」


「最悪、攻撃されるかもしれないしね」


「ああ、その可能性もあるな」


 早く服が欲しいなぁ。



「んぴょーんぴょーんぴょー、んぴょーんぴょーんぴょー」


「えっ? 『情報が欲しいから、探りを入れて来い』って言っているんデェスか?」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


「仕方ないデ~スね。ちょっと行って来マ~ス」


「我々も行った方が良いか?」


「ああ、頼むよ」


「うむ、では、行って来る」



「シバル!」

「大変よ!」


「どうしたんだ!?」


「レルのような格好をした変態が倒れていマァス!」


「なんだって!?」

「んぴょーっ!?」


「もしかしたら、彼女も縛りプレイをしているのかもしれまセ~ン」

「話を聞いてみた方が良いと思うわヨ~」


「確かにそうかもしれないな。よし、そこまで案内してくれ!」


「うむ、了解した」



 体と左腕が縄でグルグル巻きになっている。

 他には何も身に着けていない。

 ライトブラウンのウェーブのかかったセミロング。

 身長160センチくらい。

 スタイル抜群。


 このような姿の美女があお向けに倒れていた。


 これは確かに変態的だな。


 いや、そんなことを気にしている場合ではないな!

 救助しないと!


 俺は介抱するために、倒れている美女に近付いた。


「うわっ!?」


「どうした、シバル!?」


「こいつ、酒くせぇ!?」


「うっ、確かに!?」

「んぴょーっ!?」

「本当に臭いデ~ス!?」


 あれ?

 幽霊たちって、ニオイを感じるのか。

 まあ、そこはどうでもいいか。



「こいつ、酒を飲みながら登山していたのかよ」


「だとするなら、愚かとしか言いようがないな」

「まったくだ」


「んぴょーんぴょーんぴょーんぴょーんぴょー」


「どうしたんだ、ナワデシバラさん?」


「『周囲に酒の容器が見当たらない』と言っているみたいデェス」


「えっ?」


 周囲を見回してみた。


 確かに、それっぽいものはないな。


 これはいったいどういうことなのだろうか?

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