第11話 異世界の川の水は飲めるのか?

 いつもの場所、いつもの格好で目が覚めた。


「はぁ…… 見事に負けたなぁ……」


「うむ、完敗であったな」


「攻撃がまったく当たらなかったな…… あれは技術不足かな?」


「うむ、そのように思えたぞ」

「攻撃が単調すぎて、動きを読まれているようだったな」

「足がもつれることもあったな」

「運動自体に慣れていないように見えたぞ」


「そうか。空き時間に訓練をしようかな」


「それも良いが、もっとレベル上げた方が良いとも思うぞ」

「そうね。まだ素早さが負けているように見えたわ」


「そうだったのか。なら、両方やるか」



「んぴょーっ!!」


 ナワデシバラさんがやって来た。


「んぴょーっ!? んぴょーんぴょーっ!!!」


「ん? どうしたんだ?」


「『前を隠せ』と言っているみたいデ~ス」


「んぴょーっ!」


 ナワデシバラさんが首を何度も縦に振った。


「あっ、すまない。忘れていた」


 俺は両手で息子さんを隠した。


「シバル、お前、全裸でいることに慣れてきたんじゃないか?」


「えっ!? そんなことはないと思うぞ!?」


「いや、羞恥心が消えているような感じがするぞ」

「露出狂になるなよ」

「気を付けろ」


「な、なるわけないだろっ!!」


 気を付けよう!

 屋外で全裸なのは恥ずべきことなのだから!!



「さて、食料と水探しに行くとするか」


「んぴょー!」

「了解デ~ス!」



「そういえば、俺がやられたあと、ナワデシバラさんはどうしたんだ?」


「あのモンスターと戦ったけど、負けてしまったのヨ~」

「完敗でシィタね」


「んぴょー……」


「そうだったのか。なら、また一緒にレベル上げをしようか?」


「んぴょー!」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。



 移動しながら、見つけたモンスターをいつもの戦法で倒していった。


 合計5匹倒した。

 ドロップアイテムは出なかった。


 レベルが上がったからか、ナワデシバラさんが軽くなったように感じた。

 そのおかげで、あまり疲れなかった。

 良いことだな。



 川を発見した。


 川幅は数メートルくらい。

 水は透明でキレイ。

 流れは、とても緩やかだ。


 川遊びができそうだな。



「確か川の水って、一見キレイなようでも、危険な細菌とかがいるから飲んじゃダメなんだっけ?」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


「それじゃあ、せっかく見つけたのに意味がないわネ~」

「でも、それは地球の話デ~ス」

「ここでは違うかもしれまセェンよ」


「確かにそうかもしれないけど……」


「シバル、ここは試してみるしかないのではないか?」

「考えても、どうせ分からないわよ」


「まあ、確かにな」


 水の成分を確かめる方法なんてないしな。


「最悪、死んで生き返れば体は治るぞ」


「それは遠慮したいんだけどな……」



「仕方ない。覚悟を決めて、飲んでみるとしようか」


「んぴょーんぴょーんぴょー」


「ん? どうしたんだ、ナワデシバラさん?」


「『私も一緒に飲む』と言っているみたいデ~ス」


「えっ? なんでだ?」


「んぴょーんぴょーんぴょーんぴょーんぴょーんぴょー、んぴょーんぴょー」

「『シバルばかり危険な目に遭わせてしまうのは、申し訳ない』と言っているみたいネ~」


「そうか。ナワデシバラさんは義理堅いんだな。それじゃあ、一緒に飲むか」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。



 では、飲んでみるか。

 いや、まずは臭いからだな。


 川の水を両手ですくい、臭いを嗅いでみた。


 嫌な臭いはしない。

 というか、無臭だな。


 これは大丈夫そうか?



 水を飲んでみた。


 味は日本で普段飲んでいるものと大差ないな。


 これは普通に飲めるのかな?



「んぴょーんぴょーんぴょー。んぴょーんぴょーんぴょーんぴょー」

「『次は私が飲む。手が使えないから飲ませて欲しい』と言っているみたいデ~ス」


「ああ、分かったよ…… と言いたいところだが、ナワデシバラさんはどうやって飲むんだ? その猿轡さるぐつわは外せるのかな?」


「特殊能力の説明に『飲食に支障はない』って書いてありまシ~タよ」


「支障がないって、どういうことなんだ? あるようにしか見えないぞ」


「とりあえず、そのまま飲ませてみれば良いんじゃないノ~?」

「説明通りなら、飲めるはずデェス」


「そうか? なら、やってみるか」


 川の水を両手ですくた。


「そういえば、あの手で前を隠していたのよネ~」

「そうでシ~タね」

「これはとてつもなく変態的な行為デェス!!」


「んぴょーっ! んぴょーっ!! んぴょーんぴょーんぴょーっ!!!」


「分かった分かった! よく手を洗うから怒るなよ!!」



 川で念入りに手を洗ったあと、ナワデシバラさんに水を飲ませてみた。


「飲めたか?」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


猿轡さるぐつわは邪魔にならなかったのか?」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


「ならなかったのか。さすがは特殊能力だな」



「ふたりとも体調に問題はなさそうだな。これは飲める水なのかな?」


「シバル、ステータスウィンドウを見た方が良いのではないか?」


「えっ? なんでだ?」


「ステータスに『健康度』というものがあったからだ」

「そこに何か変化があるかもしれんぞ」


「なるほど。では、見てみようか」


 ステータスオープン。



「な、なんだとっ!?」


「どうした、シバル!?」

「何があったの!?」


「健康度がどんどん下がってる!? しかも、コメント欄に『多数の危険物が体内に侵入』って書いてある!?」


「んぴょーっ! んぴょーんぴょーっ!!」


「レルの方も同じデ~ス!」


「ということは、地球と同じで飲んではいけなかったということか!?」


「そうみたいデ~スね」

「ご愁傷様ネ~」


「くそったれがっ!!!!!」

「んぴょーーーっ!!!!!」



「シバル、どうする?」


「そうだな…… 多分このままだと腹を下して、長時間苦しむことになるよな?」


「んぴょーんぴょー。んぴょーんぴょーんぴょーんぴょー、んぴょーんぴょー、んぴょーんぴょーんぴょーんぴょーんぴょーんぴょー」

「『そうでしょうね。そうなるくらいなら、モンスターに殺されて、復活した方が良いのかもしれない』と言っているみたいデ~ス」


「そうだな…… 気は進まないけど、そうするか」


 モンスターを探しに行こう。



「変なニンゲン発見ウサウサ!」


 コカラスグが現れた。


 ちょうど良い。

 こいつにするか。


「死ねウサウサ!」


「うぽぁーーーーーっ!!!!!」

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